モッチャル

もっちゃりした、葉っぱの耳のまんまる
2026-08-17 17:33 / 12観点 160項目 / 設定資料
一点の特異★葉っぱの耳。これが擬態の装置
感情の出る場所★耳の角度(9状態)。顔では説明しない
種の習性草花を食べるのが好き。群れでいる
★この回の個体花を見るのが好き。仲間に食べられそうになると必死に守る
体型まんまる・短い手足(シリーズ共通ルール。特異ではない)
禁止★白目を描かない/眉を描かない/輪郭線なし
描き分け★人物=線あり/生物=線なし
「もっちゃり」の定義★柔らかさでも弾力でもなく復元の遅さ
三面図★形の定義。以降すべての生成はこれをrefにする(three_view_v2 採用)
三面図
表情集★耳の角度だけで9状態。白目・眉なしを確認(v3)
表情集
ポーズ集★体型から出る癖。ひっくり返って手足バタバタを含む(poses_v1 採用)
ポーズ集

生態生態(生息環境・食・一日・季節・天敵と苦手)12項目

モッチャルの生態は、突き詰めると「二枚の葉っぱをどう保つか」に集約される。耳は感覚器であり、擬態の道具であり、食器であり、傘であり、水を含めば重りになる。だから住む場所(草丈が耳と揃う帯状の場所)も、食べ方(前に屈めないので耳で口へ運ぶ)も、一日の配分(朝は乾かす/昼は沈む/夕に転がって降りる)も、季節(春は生え変わって表現できない/夏は乾く/秋は緑が浮く/冬は巻いて球になる)も、天敵(上を横切る影)も苦手(帆になる風)も、すべて耳の状態から導ける。まんまる体型は移動と食べ方の物理的制約として効き、擬態は「止まる/溶け込む/季節に裏切られる」の三つの形で画に出る。全12項目に不便と得意を対で置き、深刻にならず「じたばた」が残る形にした。

住む場所は「草丈が耳と揃う帯」
モッチャルは草丈が自分の耳の高さと揃う場所にしか居つかない。草が高すぎると耳が埋もれて周りが見えず、低すぎると背中が出て隠れられないため。結果として縄張りは腰高の草むら・苔の乗った石垣の隙間・畑の畦など、丈のそろった帯状の場所に細長く伸びる。
画面ではこう見える新しい場所に来ると、まず草の中に体を沈めて耳だけを立て、穂先と耳の先の高さを見比べる。合っていればそのまま座り込み、合わなければ耳を寝かせて別の場所へ転がっていく。丈が中途半端な草むらでは、沈んでは立ち、立っては沈むのを何度も繰り返す。
どこから導かれるか擬態
90秒の種草を刈ったばかりの空き地で居場所をなくしたモッチャルが、刈られた草を自分のまわりに一本ずつ立てかけて丈を作り直そうとする90秒。
乾いた地面では隠れられない/緑の鉢を見つけるのは速い
アスファルト・砂利・土間など緑のない場所ではまったく擬態できず、そこでは「動かないこと」だけで凌ぐしかない。不便は乾いた場所では丸見えになること、得意はどんな小さな緑でも見つけるのが異様に速いこと。人の家に迷い込むと、観葉植物の鉢や苔玉に一直線に向かう。
画面ではこう見える舗装の上では耳を地面に伏せて平たくなるが、隠れていないので丸い体だけがそのまま残る。室内では鉢植えに頭から突っ込み、葉のあいだから耳だけ二枚生やして止まる。人が近づくと、鉢の葉と同じ速さで耳をゆっくり揺らす。
どこから導かれるか擬態
90秒の種玄関から入り込んだモッチャルが観葉植物の鉢に隠れ、鉢から生えた二枚だけの葉が呼吸で上下しているのを子どもが見つける90秒。
朝|主食は耳にたまった露。飲み終えるまで頭が上がらない
夜のあいだに二枚の耳へたまった露を、朝いちばんに飲む。得意なのは探しに行かなくても朝食のほうが耳に乗って来ること、不便なのは飲み終わるまで耳が水を含んで重く、頭が持ち上がらないこと。飲んだあとは日向で耳を広げて乾かす時間が必要になる。
画面ではこう見える目を開けてすぐ、垂れた耳の先を体の前へたぐり寄せて露を舐め取る。片方が空になると重さが偏って体ごと傾き、傾いた側の耳をもう一度たぐって飲み直す。飲み終えると日向へ転がっていき、耳を左右いっぱいに広げて乾くまで動かない。
どこから導かれるか葉っぱの耳
90秒の種雨上がりの朝、タオルで拭こうとする子どもの手をよけて、モッチャルが自分の乾き場所(日の当たる平らな石)を探して転がっていく90秒。
食べ方|前に屈めないので、耳で口へ運ぶ
食べるのは苔・若芽・落ちた実の柔らかいところ。体が丸くて重心が高いので、地面のものを食べようと前かがみになるとそのまま前へ転がってしまう。不便は前に屈めないこと、得意は口を耳に任せるぶん、両手を地面を押さえるのに使えて姿勢が崩れないこと。
画面ではこう見える木の実に顔を近づけて一度前に転がり、起き上がってから耳ですくい上げて口へ運ぶ。苔のように広がっているものは伏せたまま口だけを動かし、体を少しずつずらして進む。うまく乗らないときは耳をぱたぱた振って乗せ直す。
どこから導かれるかまんまる体型
90秒の種子どもが差し出した木の実をモッチャルが何度やっても受け取れず、子どもが黙って手のひらを耳の高さまで下げてやる90秒。
昼|寝入りばな、風と同じリズムで耳が揺れる
日中はほとんど動かず、草むらに沈んで休んでいる。休んでいるあいだの癖として、風が渡るたびに周りの草と同じリズムで耳が揺れる(起きているときの意識的な擬態ではなく、寝入りばなに出る半分寝ぼけた動き)。得意は止まっていれば本当に見つからないこと、不便はリズムがずれた瞬間だけ「そこに何かいる」と分かってしまうこと。
画面ではこう見える風が吹くと草の穂と一緒に耳が二枚とも同じ向きへ倒れ、風が抜けると一緒に戻る。ところが風が止んだあとも耳だけが数回揺れ続け、そこだけ動いているのでかえって目立つ。本人は気づかないまま、また眠りに落ちる。
どこから導かれるか擬態
90秒の種風の止んだ昼下がり、草むらで一か所だけ揺れているものを見つけた子どもが、しゃがんだまま黙って見ている90秒。
夕|転がって水場へ降り、帰りは登れない
夕方になると水場へ向かう。丸いので下り坂は誰よりも速く、坂に体を預ければ勝手に着いてしまうのが得意な点。不便は登り返せないことで、帰りは体を左右に揺すって一歩ずつ進むしかなく、寝床に着く頃には夜になる。行動圏が「坂の下」へ細長く偏るのはこのため。
画面ではこう見える斜面の上で一度体を丸め、耳を体に巻き込んでから転がり出す。水を飲むときは耳が浸からないよう二枚とも頭の上へ折り上げてから口をつけ、飲み終えて耳を戻すとぺちんと音がする。帰りの坂では一揺すりごとに耳が反対側へ振れ、ほとんど進まない。
どこから導かれるかまんまる体型
90秒の種日が暮れても坂を登りきれないモッチャルの横を、子どもが追い越さず同じ速さで並んで歩いて帰る90秒。
春|耳が生え変わり、そのあいだ感情が出せない
春先に古い耳の縁から色が抜け、内側から新しい黄緑の耳が育つ。不便は、生えたての耳がやわらかすぎて立たず、驚いても迷っても同じようにへにゃんと折れてしまうこと。得意は、この時期の耳が一年でいちばん柔らかく、折りたたむと最良の枕になるので春のモッチャルはよく眠ること。
画面ではこう見える色の抜けた縁が内側へくるんと丸まり、それが気になって何度も舐め直す。驚いて耳を立てようとしても途中で折れるので、代わりに体ごと後ろへ跳ねて驚きを出そうとする。昼寝のときは新しい耳を二枚重ねて頭の下に敷く。
どこから導かれるか葉っぱの耳
90秒の種耳の読めない春のモッチャルの気持ちを、子どもが体の傾きと跳ね方だけで当てようとする90秒。
夏|耳が乾くと縁が巻く。湿っているうちは傘になる
日照りが続くと耳の水分が抜け、縁が内側へくるんと巻いていく。これが乾きのサインで、放っておくと耳が硬くなって角度がつけられなくなる(=感情が出せなくなる)。得意は、湿っているうちは耳を大きく広げて日陰を作れることで、夏のモッチャルの足元には小さい生き物が寄ってくる。
画面ではこう見える耳の縁が巻き始めると水たまりへ行き、耳の先だけを浸してから戻って広げ直す。日盛りには耳を目いっぱい広げて動かず、その日陰に虫や小鳥が入ってきても追い払わない。乾いた耳を立てようとするとぱりっと途中で止まり、本人が驚く。
どこから導かれるか葉っぱの耳
90秒の種炎天下、モッチャルの耳の日陰に入って涼んでいた子どもが、耳が巻いてきたのに気づいて水をかけてやる90秒。
秋|まわりが色づき、緑の耳だけが浮く
落ち葉が赤や黄に変わる季節だけ、緑の耳が周囲から浮いて擬態が効かなくなる。一年でいちばん見つかりやすい時期で、本人もそれを分かっている。得意は、そのぶん落ち葉の山に潜るのが誰よりうまく、丸い体で下から潜り込んで一瞬で消えられること。
画面ではこう見える落ち葉を一枚ずつ耳に乗せて隠そうとするが、歩き出すと落ちる。落ちるたびに戻って拾い、また乗せ、また落とす。それでも駄目だと落ち葉の山に頭から潜り込み、山がわずかに盛り上がって呼吸で上下する。
どこから導かれるか擬態
90秒の種秋、落ち葉を乗せては落としているモッチャルの耳に、子どもが黙って葉を一枚置いてやる90秒。
冬|耳を巻いて球になり、落ち葉の下で越冬する
寒くなると耳を体にぐるりと巻きつけ、継ぎ目のない球になる。落ち葉や雪の下でほとんど動かずに過ごし、雪が積もると白い小さなこぶになる。不便はこの形だと耳が使えず音も感情も出せないこと、得意は球なので体温が逃げず、寒さには誰より強いこと。
画面ではこう見える巻き始めると片方の耳がうまく収まらず、何度も巻き直してからやっと球になる。眠っているあいだも呼吸で雪の表面がゆっくり上下する。触れられると、巻き込まれた耳の先だけがぴくりと動いて、また止まる。
どこから導かれるかまんまる体型
90秒の種雪の上の小さなこぶが上下しているのに気づいた子どもが、雪を払わずにそのまま横に座っている90秒。
天敵|上を横切る影。見えた瞬間に草になる
天敵は追いかけてくる相手というより「頭上を横切る影」という現象そのもので、影が差した瞬間に動きを止めて草に化ける。得意は静止の速さと持続がずば抜けていること。不便は凧・洗濯物・雲・帽子の影でも同じように固まってしまい、しかも自分では解除できないので長いこと止まったままになること。
画面ではこう見える影が横切ると一拍もおかず耳が体に伏せ、瞬きまで止まる。影が去っても動かず、風で周りの草が揺れてもそこだけ揺れないので、かえって不自然に見える。ようやく動き出すときは、まず片耳だけをそっと持ち上げて上を確かめる。
どこから導かれるか擬態
90秒の種干した洗濯物の影で固まってしまったモッチャルの前に、子どもが動き出すまでずっとしゃがんで待っている90秒。
苦手|強い風。耳が帆になって転がされる
二枚の耳が風を受けると帆になり、丸い体はそのまま転がされる。手足が短くて何も掴めないので、風上に背を向けて耳を後ろへ流し、体を低くしてやり過ごすしかない。得意は、葉である耳が湿気に敏感で雨の来る前にひとりでに持ち上がること。ただし本人は理由を知らないので、勝手に立った耳に自分で驚く。
画面ではこう見える突風で耳が広がると足が浮き、草むらを二、三回転がってから止まる。風上に背を向け、耳を後ろへ流して体をぺたんと低くするのが「風をやり過ごす形」。雨の前には片耳ずつゆっくり持ち上がっていき(驚きの『両耳が一瞬で真上に立つ』とは動き方がはっきり違う)、上がりきったところで本人が気づいて、今度は本物の驚きの耳になる。
どこから導かれるか葉っぱの耳
90秒の種風の強い日、飛ばされていくモッチャルを子どもが両手で受け止め、そのまま風上に背を向けて一緒にしゃがんでいる90秒。

擬態擬態の仕組みと限界12項目

★核は「感情の器(耳)=擬態の装置(耳)が同じ器官」であること。モッチャルの擬態は色を変える能力ではなく、①耳を真上に立てて2枚を寄せる ②体を沈めて丸みを消す ③息を止める、を同時に保つ「姿勢」にすぎない。装置が耳である以上、嬉しくなれば耳が跳ね、音がすれば耳が向き、我慢すれば耳が震える——つまり心が動いた瞬間に必ず擬態が壊れる。「隠れたいのに気持ちが漏れる」というじたばたが、設定から自動で生まれる。対になる得意は「動かないでいられること」で、だるまさんがころんだ式の接近と、子どものそばに長く居られることを支える。失敗の主因は3系統に整理できる:耳が勝手に動く(葉っぱの耳)/丸くて転がり白い腹が出る(まんまる体型)/背景を選べず色も変えられない(擬態そのものの上限)。

擬態は能力ではなく「姿勢」
モッチャルに色を変える力はない。擬態とは①耳を真上に立てて2枚を寄せる ②体を地面に沈めて丸みを消す ③息を止める、の3つを同時にやる姿勢のこと。能力ではなく努力なので、どれか1つが崩れた瞬間に全部が同時に崩れる。
画面ではこう見える気配を感じるとその場でぴたりと止まり、垂れていた耳を左右そろえて真上へ立てる→体を平たく沈める→呼吸の上下が消える。★おまけに本人は目まで閉じる(自分が見えなければ隠れたつもり。まったく意味はない)。解除は逆順で、まず目を開け、次に息をつき、最後に耳がぱさりと垂れる。
どこから導かれるか擬態+葉っぱの耳。唯一の擬態装置が「葉の形の耳」なので、擬態=耳を〈生えている状態〉に見せる姿勢になる
90秒の種子どもが近づくたび草になり行き過ぎると耳が垂れる——それを見つけた子どもが、面白がって同じ道を何度も往復してみせる90秒。
立てた耳を支える首がない
耳を真上に立てるには頭を反らすしかないが、まんまるで首がないので体ごと後ろへ反ることになる。反りが重心を越えると、ころんと仰向けにひっくり返る。★擬態の第一手が、そのまま最大の失敗手になっている。
画面ではこう見える耳をぐっと立てる→体が少しずつ後傾する→短い足のつま先が浮く→ころん、と仰向け。手足が空を掻いてじたばた。★それでも本人は真剣で、仰向けのまま耳だけは律儀に立てて「まだ草」を主張している。
どこから導かれるかまんまる体型 × 葉っぱの耳。首がないことと耳を立てることが物理的に衝突している
90秒の種擬態するたび転ぶモッチャルの背中に、子どもが黙って小石を1つ噛ませてやると転ばなくなる——その1カットで静かに閉じる90秒。
背中の斑点は木漏れ日
背中の薄クリームの斑点は、日向にいるときだけ葉の隙間から落ちた木漏れ日に見える。だから晴れた木の下では擬態がほぼ完成する。★逆に日が翳ると斑点だけが白く浮いて、かえって目立つ。
画面ではこう見える雲が流れて日が翳ると、影の中で斑点がぽつぽつ白く浮き上がる。モッチャルは自分の背中が見えないので気づかず、日が戻るまでの間ずっと堂々と草のふりを続けている。★観客だけが「今はバレバレ」と分かる時間ができる。
どこから導かれるか擬態(体色と斑点)。斑点は自前の模様であって本人には制御できない
90秒の種雲の多い午後、翳るたび丸見えになるモッチャルのために、子どもが枝を揺すって木漏れ日を作り続けてやる90秒。
耳が音のほうへ勝手に向く
遠くの音が聞けるのは葉っぱの耳の最大の得意だが、音がすると反射的に耳だけがそちらを向く。擬態中でも同じで、自分の意思では止められない。★風もないのに草が1本だけ音のほうを向く、という現象が起きる。
画面ではこう見える完璧に草に化けている画。遠くで枝が鳴る→耳2枚だけが同時にぴくりと同じ方向へ回る→まわりの本物の草は微動だにしない。★慌てて耳を戻すが、戻し方が急なのでまた不自然に揺れて、二重にバレる。
どこから導かれるか葉っぱの耳。聴覚という得意と、勝手に動くという不便が、まったく同じ1つの器官から出ている
90秒の種子どもがわざと小さな音を立てて、草むらの中でどの葉が振り向くかを探す「音のかくれんぼ」の90秒。
息が続かない(擬態には制限時間がある)
呼吸で体が上下すると耳も揺れてバレるので、擬態中は息を止める。まんまるの体は容量が小さく、★もって十数秒。限界がくると「ぷはっ」と息が戻り、その一発で耳が大きく上下する。
画面ではこう見える静止した草の画が続く→よく見ると体が少しずつ膨らんでいる(我慢)→耳が細かく震えだす(感情表の「我慢」と同じ震え)→ぷはっ、と体がしぼんで耳が跳ね、緑の丸が肩で息をしている。
どこから導かれるかまんまる体型 × 擬態。丸い体は呼吸の上下がそのまま輪郭に出てしまう
90秒の種子どもがしゃがみ込んで待ちくらべを始め、先に息が切れたモッチャルが観念して耳を垂らす——その負け方に子どもが笑う90秒。
お腹の白は自然界にない色
伏せているかぎり白いお腹は地面に隠れて見えない。だが草地に白は存在しないので、ひっくり返った瞬間に擬態は完全に終わる。★しかも仰向けは体型上いちばん起き上がれない姿勢なので、失敗が長く続く。
画面ではこう見える緑の背中が並ぶ草むらの中に、1つだけ白い丸がぽつんと上を向いている。短い手足がバタバタ動き、耳だけは立ったまま。★通りかかった子どもには、草むらに白い月が落ちているように見える。
どこから導かれるかまんまる体型(+お腹が白い造形)。丸いので転がりやすく、短い手足では支点が作れず戻れない
90秒の種草の中に白い丸を1つ見つけた子どもが、そっと転がして緑を上に戻してやるまでの90秒。
地面を選べない
擬態が成立するのは、まわりに背の低い草か苔があるときだけ。ところがモッチャルは「隠れる=あの姿勢をとる」としか思っていない。★だから土間でも畳でもアスファルトでも、寸分たがわず同じ姿勢をとる。
画面ではこう見える玄関のたたきの真ん中で、耳を立て、体を沈め、息を止めて完全静止している緑の丸。半径2メートルに草は1本もない。★本人はうまくいっている顔で、耳の角度が自信満々に決まっている。
どこから導かれるか擬態。姿勢でしか隠れられないので、背景を判断するという工程がそもそも仕組みに入っていない
90秒の種家に入り込んだモッチャルが台所のタイルの上で堂々と草になり、大人は誰も気づかないまま夕飯が過ぎ、最後に子どもだけがそっと外へ運ぶ90秒。
雨の日は擬態そのものができない
耳が濡れると水を吸って重くなり、立たない。立たない耳はただの垂れた葉なので、★雨の日のモッチャルには隠れる手段がない。代わりに全身を丸めて石のふりをしようとするが、緑なので石には見えない。
画面ではこう見える雨。耳を立てようとしても、ぺたりと落ちる。3回試して3回とも落ちる→諦めて全身をぎゅっと丸め、目を閉じて石のつもりで固まる。★丸まったせいでかえって輪郭がくっきりして、遠くからでもよく見える。
どこから導かれるか葉っぱの耳(濡れると重くて垂れる)。得意の「耳を傘にする」も、濡れた耳では使えない
90秒の種雨宿りの軒下で隠れられなくなったモッチャルに、子どもが空き缶と葉っぱで屋根をかけてやり、耳が乾いてぴんと立ち上がるまでの90秒。
緑は季節を追えない
耳も体も緑のままなので、まわりが枯れ色になる季節にはいちばん目立つ存在になる。★それでも本人はいつもどおり完璧に姿勢を決めているので、成功していると信じている。色が変わらないことが、この子の擬態の絶対的な上限。
画面ではこう見える一面の枯れ草の中に、緑の丸が1つ、耳をぴんと立てて微動だにしない。落ち葉が降っても動かない。★1枚も自分に張り付いていないのに、たまに耳が少しだけ揺れて満足そうにしている。
どこから導かれるか擬態(体色)。★変色能力を与えないという禁止から、逆に導かれる限界
90秒の種秋。丸見えのモッチャルに子どもが落ち葉を1枚ずつ乗せてやり、最後に耳の上へ赤い葉を1枚のせて完成させる90秒。
動かないでいられるという特権
擬態中はとにかく動かないので、誰にも邪魔されず長く居座れる。★見られていると気づかれないまま子どものすぐそばまで来られるのは、この姿勢のおかげ。移動は「相手が見ていない間だけ進む」というだるまさんがころんだ方式。
画面ではこう見える子どもが背を向けている間だけ、ころころ転がって数十センチ進む→振り向く気配で急停止して耳を立てる。★止まるのが毎回わずかに遅れて、耳だけがまだ揺れている。それを繰り返し、気づけば足元にいる。
どこから導かれるか擬態 × まんまる体型(短い手足では歩くより転がるほうが速い)。★不便の裏返しの得意
90秒の種ひとりで石を蹴って帰る子どもの後ろを、振り向かれるたびに草になりながらついてくるモッチャル、門の前で子どもが振り向かないまま小さく手を振る90秒。
成功しすぎる失敗
まれに擬態が完璧に決まってしまう。すると誰にも生き物だと思われないので、★踏まれかける・座られる・草として抜かれかける。失敗より成功のほうが危ない、というのがこの擬態のいちばんおかしいところ。
画面ではこう見える完全に草になっているモッチャルの真横に子どもが腰を下ろす→ついた手が背中に乗る→それでも動かない(今動いたら擬態が失敗するから)→耳だけが小刻みに震えている。★体がじわじわへこんでいく。
どこから導かれるか擬態。姿勢を保つこと自体が目的化していて、やめるという判断ができない
90秒の種子どもが草の上に寝転んで空を見ている90秒、枕にしているのが実はモッチャルで、子どもが立ち上がったあと、へこんだ緑の丸がゆっくり膨らんで元に戻る。
擬態が解けるのは「嬉しい」とき
擬態が最後に解けるのは、バレたときではなく★嬉しくなったとき。嬉しいと耳が両方ぱたぱた跳ねるので、隠れているのに自分から動いてしまう。感情の器と擬態の装置が同じ耳である以上、こらえようがない。
画面ではこう見える完璧に静止した草。子どもがそばにおやつを置いて離れる→数秒の静止→耳が1枚だけぴくりと跳ねる→こらえきれず両耳がぱたぱた→体まで弾んで、もう草には見えない。★本人は隠れているつもりのまま。
どこから導かれるか葉っぱの耳(感情が耳の角度に出る)× 擬態。感情の出口と擬態の装置が同一器官なので、心が動くと必ず擬態が壊れる
90秒の種子どもが草むらに向かって黙っておやつを置き、少し離れて背を向けたまま待つ——やがてぱたぱたという音だけが聞こえてくる90秒。

能力特殊な能力(超能力ではなく、この体だからできる程度のこと)12項目

モッチャルにできることを全て「葉っぱの耳/まんまる体型/擬態」の物理的な帰結だけに限定し、超能力はひとつも置かなかった。★各能力に必ず自壊する上限を対で仕込んである(耳は濡れると重い・転がると止まれない・擬態は動いた瞬間に終わる・隙間は入れるが出られない)ため、12項目すべてが「本人は真剣、でも解決になっていない」じたばたの型に収まり、能力が物語を終わらせない。★感情表現(耳の角度9状態=上下の傾き)と機能が衝突しないよう、能力側の耳は「水平の回転/面の広さ/重さ/湿り/光の向き」を使う分担にした。制作上も、感情差分の耳パーツをそのまま流用できる。

耳が「方向」だけを拾う
葉っぱの耳は面が広く、音を集める皿になっている。遠くの小さな音でも「どっちから来たか」だけは分かるが、何の音かまでは分からない。だから風でも足音でも同じように反応してしまい、だいたいは空振りで、本人だけが真剣に身構えている。★感情表現の耳(上下の角度)と混ざらないよう、音を探すときの耳は水平にぐるりと回す。
画面ではこう見える体はうずくまったまま一切動かさず、片耳だけが音の方へゆっくり水平に回る。少し遅れてもう片方も追いつく。何もいないと分かると、2枚が同時にぺたんと元の水平に戻り、また丸まる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(面が広い=集音器になる)
90秒の種子どもが落とした鈴が草むらに消え、モッチャルの耳が何度も方向を指すが、そのたび出てくるのは石ころや木の実で、最後の一回だけ本物に当たる。
耳を屋根にする
雨や強い西日のとき、2枚の耳を頭の上に持ち上げて重ね、屋根にできる。ただし葉っぱなので水を吸うとどんどん重くなり、数十秒でずり落ちて結局ずぶ濡れになる。掲げ直すだけで精一杯なので、誰かに差しかけると自分の分が足りない。
画面ではこう見える耳を後ろから前へゆっくり持ち上げ、頭の上で左右を重ねる。水が溜まると耳の先から雫が落ち、片方ずつずり落ちる。落ちるたびに首を振って掲げ直し、その動きだけを何度も繰り返す。
どこから導かれるか葉っぱの耳(面が広い/濡れると重い)
90秒の種通り雨の軒下で、子どもの横にいるモッチャルが屋根を作ろうとして何度もずり落ち、最後は子どもが上着の裾をモッチャルの上に差しかける。
耳で挟んで運ぶ
短い手足では物が持てないので、運ぶときは2枚の耳で左右から挟む。挟めるのは葉っぱ1枚か木の実1粒くらいの軽さまで。耳が塞がると音が聞こえず前も半分見えなくなるので、運んでいる間はやたらぶつかるし、よく落とす。
画面ではこう見える頭を下げて対象に耳を寄せ、挟んだまま首を持ち上げる。歩き出すと耳が視界を塞ぐので、数歩ごとに立ち止まって耳を少しだけ開いて覗き、また閉じる。落とすと最初からやり直す。
どこから導かれるか葉っぱの耳(短い手足の代わりになる唯一の「手」)
90秒の種子どもの手から落ちたボタンを、モッチャルが耳で挟んで運ぼうとし、覗くたびに落とし、最後は子どもの靴の上にぽとりと置く。
雨の前に耳が垂れる
湿気を吸うと葉っぱの耳が自然としんなり垂れる。本人は雨を知っているわけではなく、体が勝手に反応しているだけ。朝露の濃い日や川べりでも同じように垂れるので、当たるとも限らない。★観客だけが先に気づけるので、汲み取りの装置になる。
画面ではこう見える何もしていないのに、水平だった耳の先が少しずつ下がって地面に着く。本人はいつも通り座っているので、画の中で変化しているのは耳だけ。時々持ち上げようと首を振るが、すぐまた落ちる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(植物質=湿度で張りを失う)
90秒の種洗濯物を干す子どもの足元でモッチャルの耳が垂れていき、観客だけが先に気づき、子どもが気づくのは最初の一粒が落ちた後。
耳が日を追う
葉っぱの耳には明るい方へ向く癖がある。眠っていても耳だけが日の当たる方へゆっくり傾くので、時間が経つと向きが変わっている。逆に日が陰ると耳の張りが抜けてしおれ、動きまでのろくなる。日向を探して動くのではなく、耳が勝手に向くだけ。
画面ではこう見える丸まって寝ている体は動かず、2枚の耳だけが同じ方向へ少しずつ倒れていく。雲が日を隠すと耳が一斉にへたり、日が戻ると数秒かけてまた持ち上がる。体は最後まで一度も動かない。
どこから導かれるか葉っぱの耳(向日性)
90秒の種昼寝の場所を子どもが日向へ移し直すたび、耳の向きだけが少しずつ変わっていき、夕方には二枚とも同じ方角を向いて西日を受けている。
転がって移動する
歩くより転がる方が速い。まんまるなので坂では驚くほど加速するが、止まる手段も曲がる手段もない。目的地はだいたい通り過ぎ、止まった場所から歩いて戻ってくる。本人はこれを移動手段として真面目に選んでいる。
画面ではこう見える手足を体に引っ込め、前に倒れ込んで回転を始める。行き過ぎて止まった後、短い手足を出して起き上がり、来た方向へとことこ歩いて戻る。表情は最後まで真顔。
どこから導かれるかまんまる体型(シリーズ共通の造形ルールから出る癖)
90秒の種坂の上から呼ばれたモッチャルが勢いよく転がって子どもの脇を通り過ぎ、3回目でようやく子どもが坂下で待ち構える。
座り込むと重しになる
短い手足を引っ込めて座ると、接地面が広く低重心なので驚くほど安定する。風で飛びそうな軽いものの上にぽすんと乗れば、その間だけは飛ばない。ただし一度座ると立ち上がるのに時間がかかるので、本人はしばらく身動きが取れなくなる。
画面ではこう見える対象の上に体ごと乗り、左右に小さく揺すって沈み込む。乗った後は微動だにせず、風で耳だけが横に流れる。どく時は前後にゆすって反動をつけ、一度は失敗してまた沈む。
どこから導かれるかまんまる体型(低重心・接地面が広い)
90秒の種風の強い河原で子どものスケッチブックのページがめくれ続け、モッチャルが紙の上に座って押さえ、絵が仕上がるまで耳だけが揺れている。
隙間に転がり込む
丸くて出っ張りがないので、石の間や縁側の下など、頭が入るところにはそのまま入れる。問題は出るときで、押し返す手足が短いうえ体に取っ掛かりがないため自力では抜けられない。入るのは一瞬、出るのは大仕事。
画面ではこう見える隙間に頭から突っ込み、体を数回ゆすって奥まで入る。中で向きは変えられず、外に出ているのは耳2枚だけ。抜けようとして体が前後に揺れ、そのたび外の耳がぱたぱた動く。
どこから導かれるかまんまる体型(凸凹がない=抜き差しの取っ掛かりもない)
90秒の種縁側の下に転がり込んだモッチャルの耳だけが板の隙間から出ていて、子どもが見つけるまでの間、その2枚の動きだけで中の様子が伝わる。
止まると見えなくなる
緑に薄クリームの斑点は、草や苔の中では輪郭が消える。動きを止めている間だけ本当に見つからない。ただし呼吸で体が上下するので、じっと見ていると1箇所だけ草が上下していて分かる。★見つけてほしい時にも反射で固まってしまうのが不便側。
画面ではこう見えるその場でぴたりと止まり、耳まで地面に伏せて動かなくなる。画面の中で草の一部だけがゆっくり上下している。固まったまま目だけが左右に動き、本人は完全に隠れたつもりでいる。
どこから導かれるか擬態
90秒の種探しに来た子どもの目の前でモッチャルが反射的に固まってしまい、見つけてほしいのに動けず、呼吸で揺れる草に子どもが気づくまでの90秒。
草を鳴らさずに進む
丸い体には引っかかる角がないので、草をかき分けずに押し分けて進める。枝も折らず、音もほとんど立たない。おかげで近づいたことに相手が気づかず、真横まで来てから驚かれる。本人に驚かせる気はまったくない。
画面ではこう見える草の穂が一列だけ左右に割れ、その筋だけが静かに移動していく。本体は最後まで見えない。到着すると草の間から耳が2枚だけ先に出て、それから頭が出る。
どこから導かれるか擬態(草の中を移動するための体・角のないまんまる)
90秒の種泣いている子どもの背後で草が一筋だけ動き、すぐ真横に耳が2枚生え、子どもが飛び上がってから笑い出す。
虫や小鳥に本物と間違われる
止まっていると草そのものに見えるので、てんとう虫や小鳥が耳や背中に乗ってくる。振り落とすのは簡単だが、モッチャルは動かない方を選ぶ。我慢している間は耳が細かく震える(=既存の感情表現「我慢」がそのまま使える)。
画面ではこう見える耳の先に虫が止まった瞬間、体が固まる。耳が小刻みに震え続け、それでも角度を変えない。虫が飛び立つと、こらえていた分だけ耳が一度ぱたんと大きく跳ねる。
どこから導かれるか擬態
90秒の種虫を捕まえに来た子どもが、モッチャルの耳に止まった一匹に伸ばしかけた手を止め、二人でじっと飛び立つのを待つ。
白いお腹=擬態の唯一の穴
擬態が効くのは背中側だけで、お腹は真っ白。ひっくり返ると草の中に白い丸がぽつんと浮き、どこからでも見える。手足が短くて自力では起き上がれないので、転んだ時点で居場所が全部バレる。隠れるのが得意な体の、唯一の弱点であり、唯一の合図でもある。
画面ではこう見える転んで仰向けになり、短い手足が空を掻く。緑一面の中に白い丸が一つだけ。じたばたするほど周りの草が揺れて余計に目立つ。起こしてもらうと、何事もなかったように座り直す。
どこから導かれるか擬態(+「お腹が白い」という確定造形)
90秒の種何度呼んでも見つからなかったモッチャルを、子どもが最後に見つけるのは、草の中でひっくり返って白い腹を見せている時。

日常普段なにをしているか(起床→日課→移動→食事→遊び→こだわり→他の生き物→天候→就寝)14項目

モッチャルの一日は「隠れる場所を選ぶ → 苔になりきる → その擬態を自分の耳が裏切る」という循環でできている。朝いちばんの水切りで始まり、夜に耳をたたんで終わり、また露が溜まって朝に戻る(項目14→項目1で閉じる)。移動も食事も遊びも、すべて「手が短くて届かない/耳が邪魔をする/隠れすぎて気づかれない」の三つの不便から出ていて、それぞれに対になる得意(転がれる・遠くが聞こえる・絶対に見つからない)を必ず持たせた。感情表現は expressions_v3 で実証済みの耳9状態(平常=水平/興味=両耳が前/驚き=真上/迷い=片方だけ上がる/警戒=横に折れる/怖い=後ろに寝る/嬉しい=ぱたぱた跳ねる/落胆=ぺたん/眠い=垂れて広がる)だけを使い、それ以外の耳の芝居は書いていない。

朝の水切り
夜のあいだに葉っぱの耳へ露が溜まるので、朝はまず耳が重くて垂れている。手が短くて拭えないから、体ごと一度だけぶるっと震わせて水を飛ばす。全身が一度に乾くのが得意だが、飛んだ水滴が朝日に光って、せっかく隠れていた場所を自分から目立たせてしまう。
画面ではこう見える目を開ける前に耳の先が2回ぴくっと落ちる → 体に力をためて、ぶるっと一度だけ震える → 耳だけが遅れて2回ぱたんと鳴る → 水滴が空中に散って光る
どこから導かれるか葉っぱの耳(主)+まんまる体型(丸くて手が届かず、自分で耳を拭えない)
90秒の種早起きした男の子が朝もやの草地で水しぶきの光に気づき、ぶるっと震えたモッチャルと目が合って、二人とも動けないまま日が昇りきる。
今日の座る場所さがし(色合わせ)
起きて最初にやるのが、その日一日を過ごす苔を決めること。背中の薄クリームの斑点が苔の色と合わないと隠れられないので、座っては少しずれ、また座り直す。合う場所を見つけるのは速く、決まればそこが夕方までの定位置になる。
画面ではこう見える苔に腰を下ろす → 体を左右に揺すって横目で自分の背中を見ようとする(丸すぎて見えない) → 10cmほど横にずれる → また揺すって見ようとする。4回目でぴたりと動かなくなる
どこから導かれるか擬態(主)+まんまる体型(球体なので自分の背中が確認できない)
90秒の種女の子が毎朝ちがう苔にいる緑のかたまりを不思議がり、ある朝いちばん色の合う苔をちぎって隣に置いてやると、モッチャルは黙ってそこへ転がっていく。
耳を干す
濡れた葉っぱの耳は重く垂れて、前が見えなくなる。だから日が高くなると耳を左右いっぱいに広げて地面に平置きし、乾くまでじっと動かない。乾いた耳はぴんと張り、遠くの音まで拾えるようになる。
画面ではこう見える日向で耳を左右いっぱいに広げて地面に平たく置く → 乾くまで一切動かない(呼吸の上下だけ) → 乾くと耳の縁が内側にくるっと丸まって持ち上がる
どこから導かれるか葉っぱの耳(主)
90秒の種昼寝する子どもの隣でモッチャルも耳を広げて干していて、雲が日を隠すたびに耳がぺたんと垂れ、また日が差すと持ち上がる、それだけが90秒続く。
音がしても耳だけ向ける
体が重く、短い手足では起き上がるのに手間がかかる。だから物音がしても体はそのままで、耳だけがゆっくり音の方へ回る。おかげで寝転がったまま周囲のことがだいたい分かってしまう。
画面ではこう見える伏せたまま片耳だけが音の方へゆっくり回る(体は微動だにしない) → 本当に近づいてくると両耳が前へ持ち上がり、そこで初めて頭が上がる
どこから導かれるか葉っぱの耳(主)+まんまる体型(起き上がるのが億劫)
90秒の種草むらで寝転がった男の子が、自分が寝返りを打つたび真横の苔から耳だけがひとつ回るのに気づき、わざと何度も指を鳴らして遊ぶ。
転がって移動する
歩こうとすると自分の垂れた耳を踏んで転ぶので、たいてい横倒しになって転がっていく。歩くより速いし、丸いので倒れても痛くない。ただし止まる方法がないので、目的地はいつも通り過ぎる。
画面ではこう見える二歩だけ歩いて自分の耳を踏み、その勢いで横倒し → ころころ転がる → 目的地を行き過ぎて止まる → 少し戻ろうとして、また行き過ぎる
どこから導かれるかまんまる体型・短い手足(主)+葉っぱの耳(歩くと自分の耳を踏む)
90秒の種坂の下で女の子が足を出して止め役になってやると、モッチャルは何度も坂を登り返しては転がり、意味のない往復が日が暮れるまで続く。
草をむしって、ひっくり返る
手が短くて草を持てないので、口でくわえて体ごと後ろに引く。踏ん張りが効かないから、ちぎれた反動でそのまま仰向けになる。丸い体では支点が作れず、手足をばたつかせても揺れるだけで、たいてい何度目かの弾みでたまたま横に落ちるまで起き上がれない。
画面ではこう見える口で草を引く → ちぎれた反動で仰向け → 短い手足を全力でばたばた(体が左右に揺れるだけで戻らない) → 10秒近く粘って、やっと横に落ちる。口には草がくわえたまま残っている
どこから導かれるかまんまる体型・短い手足(主)
90秒の種弁当を広げた男の子の横でモッチャルが草をむしっては仰向けになるのを3回くり返し、4回目にようやく手を出して起こしてやると、モッチャルは礼もせずそのまま食べ続ける。
耳と同じ形の葉っぱを並べる
自分の耳と同じ形の落ち葉を見つけると、必ず拾って自分の横に置く。口でしか運べないので一度に1枚ずつしか集まらない。形の見分けだけは正確で、少しでも違うと口で放り捨てる。
画面ではこう見える葉を口でくわえて運ぶ → 自分の耳の横に置く → 耳と葉を交互に見て頭が左右に傾く → 違えば口で放る/同じなら両耳がぱたぱた跳ねる
どこから導かれるか葉っぱの耳(主)
90秒の種女の子が落ち葉のなかから耳そっくりの一枚を選んで置いてやり、並べた葉が突風で全部飛んでいっても、モッチャルがまた一枚目から拾い直すのを二人で見送る。
固まっているのに、耳が動いてバレる
危ないと感じると全身を止めて苔になりきる。ところが感情は耳の角度に出るので、止めているつもりの耳が勝手に立ってしまう。動かない練習は毎日しているが、まだ一度も最後まで成功していない。
画面ではこう見える全身完全静止(呼吸まで止まる) → 近づく足音に反応して両耳が真上に立ってしまう → 草の海のなかで、そこだけ葉が2枚ぴんと立っている
どこから導かれるか擬態(主)+葉っぱの耳(感情が耳の角度に出るので擬態を裏切る)
90秒の種かくれんぼの鬼になった女の子が、草むらで一か所だけぴんと立っている葉に気づくが、見つけたと言わずに数え直して、モッチャルにもう一度隠れる時間をやる。
草として乗られる
擬態が効いているときは、虫や小鳥が本気で草だと思って背中に乗ってくる。短い手足では背中に届かないので払えず、耳を水平に垂らしたままじっと耐える。限界が来ると横に転がって落とすが、その頃にはたいてい相手はもう飛び立っている。
画面ではこう見える背中に虫が乗る → 耳は水平のまま動かない → 体がだんだん斜めに傾いていく → 耐えきれず横に転がる → 空の背中を確かめようとして、また転がる
どこから導かれるか擬態(主)+まんまる体型(背中に手が届かない)
90秒の種男の子が見つけたときにはモッチャルの背中に小鳥が3羽乗っていて、追い払っていいのか分からず、しゃがんだまま鳥が飛び立つのを一緒に待つ。
隠れすぎて、見つけてもらえない
本気で隠れると、まず見つからない。ところが自分から出ていくきっかけを作れないので、探されていると分かっても苔のまま固まってしまう。最後は迷った末に、片方の耳だけを持ち上げて振る。
画面ではこう見える子どもが真横を通り過ぎる → 両耳が前へ持ち上がる → 片方だけが上がって首が傾く → 数秒止まって、上がったほうの耳をゆっくり2回だけ振る
どこから導かれるか擬態(主)+葉っぱの耳(出せる合図が耳しかない)
90秒の種探しものをしている男の子が草地を三度往復して諦めかけたとき、背中側で草が一枚だけ2回揺れたのに気づき、振り返ってしゃがみこむ。
鳥に耳を巣材と間違えられる
乾いた葉っぱの耳は、鳥から見れば上等な巣材に見えるらしい。短い手足では踏ん張れず、くわえられるとそのまま引きずられていく。耳は丈夫でちぎれないので怪我はしないが、抵抗の手段は耳を振ることしかない。
画面ではこう見える耳をくわえられて前のめりに引きずられる → 短い手足が地面を掻くが空回りする → 首を大きく振って耳を抜く → 抜けた反動で仰向けに倒れる
どこから導かれるか葉っぱの耳(主)+擬態(本物の葉に見えるので間違えられる)
90秒の種巣を作る鳥とモッチャルの耳の引っぱり合いを見た女の子が、落ち葉を集めて鳥のほうに置いてやり、鳥がそちらをくわえて飛び去るのを二人で見上げる。
雨の日、耳の傘が重くなる
雨が降ると耳を頭の上に持ち上げて傘にする。ただし濡れた耳はすぐ重くなり、数秒で顔に垂れてきて前が見えなくなる。顔だけは最後まで濡れずに済むが、そのぶんどこへも行けない。
画面ではこう見える耳を頭の上へ持ち上げる → 数秒で前に垂れて視界が塞がる → そのまま歩き出して、その場をぐるぐる回る → 止まって、また耳を持ち上げ直す
どこから導かれるか葉っぱの耳(主)
90秒の種雨宿りしていた男の子が、同じ場所を回り続けるモッチャルを黙って抱え上げて軒下に置くと、モッチャルは礼もせず、そこで耳を広げて干しはじめる。
日向の石に、助走をつけて登る
昼過ぎの日向は決まって同じ石の上にあるが、短い手足では登れない。少し下がって勢いをつけ、跳ねて、鼻先をぶつける。三回目あたりでたいてい乗れて、乗ってしまえば誰より安定して座っていられる。
画面ではこう見える石から少し離れる → 跳ねる → 鼻先が石にぶつかって落ちる → 角度を変えて二回目 → 三回目でお腹から乗り上げ、手足をばたつかせて体を引き上げる → 乗ったあとは日が傾くまで動かない
どこから導かれるかまんまる体型・短い手足(主)
90秒の種石の上で本を読んでいた女の子が、下で何度も跳ねる音に気づいて場所を半分空け、モッチャルが自力で乗りきるまで手は貸さずに待つ。
夜、一回転して耳をたたむ
眠る前に必ずその場で一回転して、向きを決めてから座る。それから耳を前に折り重ね、その上に頭を落とす。手先はまるで不器用なのに、耳をたたむ手際だけは妙にいい。
画面ではこう見えるその場でゆっくり一回転 → 座る → 耳を前へ折って重ねる → 頭をぽとんと落とす → 眠ると耳が完全に垂れて左右に広がり、体が平たくなる
どこから導かれるか葉っぱの耳(主)+まんまる体型(眠ると平たくつぶれる)
90秒の種帰る時間になった男の子が寝支度の一回転を見届けてから立ち上がり、翌朝そこを覗くと苔がまだ少しへこんでいて、そのくぼみに朝露が溜まっている。

社会社会性(群れ・個体差・意思疎通・子育て・縄張り)12項目

答えは「ゆるく群れるが、群れには見えない」。★擬態が社会の"形"を決め(等間隔・目印係・草に戻る=解散)、★葉っぱの耳が"言語"を決め(角度のコピー=会話)、★まんまる体型が"作法"を決める(こつん挨拶・横並び・押し合い→助け起こす)。★喋らない生き物の会話を成立させる分業=【音は「ここにいる」だけを運び、意味は耳の角度だけが運ぶ】。葉ずれの音に意味を持たせないことで「喋る」に近づかず、それでいて音(=シリーズの縛りの1つ)が使える。子育ては「親が決まらない」形にして重い背景を回避し、縄張りは土地でなく「自分のくぼみ」に縮小して争いをほっこりの中に収めた。

等間隔でしか群れない
5〜10体が同じ草地にゆるく集まるが、決して密集しない。かたまると「草の生え方」として不自然になり、擬態そのものが壊れるから。だから画面に映るのは群れではなく、ほんの少し不揃いな草地。
画面ではこう見える1体が近づきすぎると、隣の緑の塊が数センチだけじりじり後ずさって間隔を戻す。子どもが1体を抱き上げて別の場所に置くと、周囲の「草」が数秒かけて少しずつ動き、また等間隔に並び直す。
どこから導かれるか擬態。密集は植生として不自然になるので、群れの形そのものが擬態に規定される。
90秒の種草地に座って弁当を広げた子どもが、いつのまにか自分を中心にした等間隔の輪ができていることに気づく90秒。
目印係(常に1体だけ耳を上げている)
全員が上手に隠れると、仲間同士も互いを見つけられなくなる。だから群れは常に1体だけ、耳を草の上に出しておく。上げ疲れた個体が耳を沈めると、それを見た別の個体が耳を上げる。合図はそれだけで、順番も決まっていない。
画面ではこう見える草原に葉っぱの耳が1組だけ、風とは違うリズムで揺れている。しばらくすると耳がすっと沈み、少し離れた場所から別の耳が2枚立ち上がる。
どこから導かれるか擬態+葉っぱの耳。擬態が上手すぎることの不便を、耳という唯一の突起で補っている。
90秒の種「あの葉っぱだけ揺れ方が違う」と気づいた子どもが近づくたび耳が沈み、別の場所から立ち上がるので、いつまでも追いつけない90秒。
会話=耳の角度をコピーし合う
意思疎通は、相手の耳の角度を自分の耳で真似すること。同じ角度に揃えば「わかった」、違う角度のまま止めれば「いやだ/わからない」。伝わらないときは、言い出した方がさっきより大きく同じ角度をやり直す。
画面ではこう見える片方が耳を前へ持ち上げる→もう片方が同じ角度にする→2体そろって同じ方向へ耳を向ける。合わないときは、最初の1体がもう一度、今度は極端な角度で繰り返す。
どこから導かれるか葉っぱの耳。感情が耳の角度に出るので、角度をそのまま真似ることが「返事」になる。
90秒の種両手を頭の横に当てて耳の角度を真似た子どもに、モッチャルが同じ角度を返してきた、その一瞬で閉じる90秒。
葉ずれの音は「位置」だけを伝える
遠くの仲間を呼ぶときは、2枚の耳をこすり合わせて さらさら と鳴らす。★この音が運ぶのは「ここにいる」だけで、意味は一切運ばない(意味を運ぶのは耳の角度だけ)。草擦れとそっくりなので、人間には風の音にしか聞こえない。
画面ではこう見える風が止まっているのに、草の音だけが途切れずに続いている。カメラが寄ると、緑の塊の上で2枚の葉っぱが互いをこすり合っている。
どこから導かれるか葉っぱの耳+擬態。耳が葉なので、鳴らした音まで草に化ける。
90秒の種無風の夕方、鳴りやまない草の音の出どころを、子どもが息を止めて一つずつ確かめていく90秒。
向かい合わない作法(こつん、と横並び)
手足が短くて握手も手振りもできず、丸い体は正面を向き合わせると不安定になる。だから挨拶は体ごとの「こつん」で、話すときは向かい合わずに横一列に並ぶ。ぶつかった反動の揺れが止まるまで両方が動かないのが礼儀。
画面ではこう見える転がって近づき、こつん。両方がゆらゆら揺れ、止まるまでじっと待つ(せっかちな個体は揺れている途中で動き出して転ぶ)。並んで座ると、隣り合う耳の先が瓦のように少しずつ重なる。
どこから導かれるかまんまる体型(短い手足)。手で挨拶できず正面を向き合えない体型が、そのまま作法になっている。
90秒の種真似して頭をこつんと当てた子どもが、揺れが止まるまで動いてはいけないと察して、じっと固まっている90秒。
個体差=葉の縁と斑点(隠れられる場所が違う)
どの個体も葉っぱの垂れ耳2枚でシルエットは共通だが、葉の縁の形(まるい/細長い/ぎざぎざ)と斑点の出方だけが個体ごとに違う。自分の耳に似た植物の中でしか上手く隠れられないので、どこに居るかでどの子か分かる。
画面ではこう見える合わない植生に置かれると、耳を何度も向け直して落ち着かない。やがて自分で転がって元の苔まで戻り、着いた瞬間に両耳が水平にぺたんと垂れる(=安心)。
どこから導かれるか擬態。隠れ先が体の模様で決まるので、模様の個体差がそのまま居場所の個体差になる。
90秒の種連れ帰ったモッチャルが部屋のどこに置いても落ち着かず、鉢植えの苔を横に置いた瞬間に耳が垂れる90秒。
縄張りは場所でなく「自分のくぼみ」
同じ所に長く座るので、苔に体型そのままのくぼみができる。それが唯一の持ち物であり縄張り。ただし追い出す手段がない(丸いので押しても滑るだけ)。
画面ではこう見える帰ってきた個体が自分のくぼみに先客を見つけ、真横に立ったまま耳を左右バラバラにして動かない。しばらくして諦め、隣に無理やり体を押し込み、2体でぎゅうぎゅうに収まる。
どこから導かれるかまんまる体型。丸くて重い体が長時間座ることでくぼみができ、丸いせいで相手を排除できない。
90秒の種草地の小さな窪みに腰を下ろした子どもが、横で困っている持ち主に最後まで気づかず、観客だけが分かっている90秒。
けんかは押し合い、必ず助け起こして終わる
牙も爪もなく手足も短いので、争いは体をぶつけ合う押し合いだけ。押し負けて仰向けになると自力では起き上がれず、勝った方は放っておけない。だから勝負がつくと、必ず協力で終わる。
画面ではこう見えるぶつかり合い→片方がころんと仰向けになって手足をバタバタ→勝った方が耳を体の下に差し込み、てこの要領でひっくり返す→両方の耳がぺたんと下がって、それきり。
どこから導かれるかまんまる体型(+葉っぱの耳が道具になる)。起き上がれない不便が、争いを協力で終わらせる仕組みになっている。
90秒の種仲裁に入ろうと駆け寄った子どもの目の前で、勝った方が先に相手を起こしてしまい、手を出す必要がなくなる90秒。
親は決まっていない
子は「いちばん近い大きな塊」についていく習性で育つ。世話をしていた個体が転がって離れても、地面すれすれの低い視点と周りの擬態のせいで、入れ替わったことに子は気づかない。だから群れの誰もが順番に世話役になる。
画面ではこう見える小さな塊が大きな塊の後ろをころころ付いていく。前の1体が向きを変えて離れると、子はそのまま同じ位置にいた別の個体の後ろに付く。付かれた方は片耳だけ持ち上げて(あれ?)、すぐ水平に戻して受け入れる。
どこから導かれるか擬態(+まんまる体型)。周りが同じ緑に紛れていて、低く転がる視点からは相手の入れ替わりが見えない。
90秒の種1体を追いかけていた子どもが、いつのまにか自分が「大きな塊」役になっていて、子モッチャルに付いてこられている90秒。
赤ちゃんは隠れられない(大人が耳をかけて隠す)
生まれたては耳がやわらかくて立たず、体も新芽の黄緑(★幼体だけの一時的な色。育つと確定配色の緑+薄クリーム斑点に落ち着く)なので、擬態がまったく効かない。近くの大人が自分の耳を1枚かぶせて隠してやる。ついでに耳の角度も見よう見まねで覚えるが、柔らかいので片耳しか上がらない。
画面ではこう見える大人の垂れ耳の下から、明るい黄緑の丸い体がはみ出している。中で嬉しくてぱたぱた動くたびに耳が持ち上がって中身がバレ、大人が無言で耳を掛け直す。
どこから導かれるか葉っぱの耳+擬態。擬態が効かない時期を、耳という唯一の可動部でしのいでいる。
90秒の種草の中で1か所だけ黄緑が光っているのに気づいた子どもが近づくと、大人の耳がすっと掛け直される90秒。
別れの合図=草に戻る
会話の終わりに挨拶はない。耳を水平に垂らして動きを止める、それが「もう終わり」の合図。追いかけて続けさせる手段がないので、別れはいつも静か。★毎話を満足で閉じる型としてそのまま使える。
画面ではこう見える向き合っていた2体のうち片方が、耳をぺたんと垂らして動きを止める。数秒待って、もう片方も同じようにする。カメラが引くと、そこはもうただの草地。
どこから導かれるか擬態+葉っぱの耳。「隠れる」がそのまま「会話を終える」になっている。
90秒の種日が暮れて手を振った子どもに返事はなく、モッチャルがゆっくり草に戻っていくのを見届けて閉じる90秒。
人間の「耳」を読み違える
相手の気持ちを耳の角度でしか読まないので、人間に対しては耳に見えるものを読む。フードの紐、二つ結びの髪、帽子のつば、鞄の肩ベルト。それが垂れていると「落ち込んでいる」と判断して、そっと寄ってくる。
画面ではこう見える帽子のつばを後ろに回した子には耳を立てて(=興味)転がって近づき、フードの紐が垂れた子の隣には黙って体をくっつける。子どもが髪を結び直すと、つられてモッチャルの耳の角度も変わる。
どこから導かれるか葉っぱの耳。耳の角度が唯一の言語なので、他種にもその文法をそのまま当てはめてしまう。
90秒の種元気のない日にかぎってモッチャルが集まってくる理由が子どもには分からず、垂れた帽子の紐だけが観客に見えている90秒。

人と人(子ども)との関わり12項目

モッチャルは人を「人間」として認識しない。擬態種なので判別基準は【止まっているか/動いているか】だけで、だから関係は「子どもが動きを止めることを覚える」ところから始まる。慣れの進行は耳の角度だけで測れ(横折れ→水平→前傾→ぱたぱた→たたむ)、★「通じた」の到達点は耳を折りたたんで子どもの足の甲で寝る画=擬態のセンサーをしまう無防備の表明。大人に見えないのは魔法ではなく目線の高さの問題なので、しゃがんだ大人には見える——これが「アイレベルを低く」というカメラ規約の作品内の理由になる。

人は「止まっているか、動いているか」
モッチャルは人を種類で見分けない。擬態する生き物なので、世界を「動かないもの=風景」と「動くもの=固まるべき対象」の2つにしか分けていない。だから同じ子どもでも、走っている間は敵で、座った瞬間から風景になる。
画面ではこう見える子どもが駆け寄ると耳が左右とも横に折れて体が完全静止(草にしか見えなくなる)。子どもが座って動きを止めると、耳がゆっくり水平の位置まで戻り、体がひとつぶん前に傾く。
どこから導かれるか擬態。逃げるのではなく止まることで生き延びる種なので、判別基準が「動き」以外に育っていない
90秒の種走ってきた子が石につまずいて座り込んだその瞬間、目の前の草むらの一角だけが「動きをやめた側」に変わり、じわりと近づいてくる。
見つかっても逃げない
至近距離で覗き込まれても走って逃げるということをしない。擬態種の防御は「動かないこと」なので、恐怖が最大のときほど体は静止する。ただし全部は止めきれず、葉っぱの耳の先だけが我慢のかたちで震える。
画面ではこう見える子どもの指が10cmまで来ても体は微動だにせず、黒目も動かない。葉っぱの耳の先端だけが小刻みにふるふると震え続ける。
どこから導かれるか擬態。動かないことが防御なので、感情の逃げ場が耳の先端しか残らない
90秒の種草を一本摘もうとした子どもが、摘もうとしたその草だけが震えていることに気づいて、手を止めたまま動けなくなる。
慣れの5段階=耳の高さ
警戒から信頼までの距離が、耳の角度だけで外から測れる。①横に折れて硬直②水平(平常)③前へ持ち上がる(興味)④ぱたぱた跳ねる(嬉しい)⑤折りたたんで枕にする(寝る=全面信頼)。台詞もナレーションも要らず、同じ構図の反復で進行が見える。
画面ではこう見える同じアングル・同じ距離の3カットを並べ、体はほぼ同じ姿勢のまま耳の角度だけが①→③→⑤へ変わる。子どもの手の位置も毎回同じにしておくと、変わったのが耳だけだと分かる。
どこから導かれるか葉っぱの耳。感情が耳の角度に出るという確定ルールを、そのまま「人との距離のものさし」に流用できる
90秒の種雨宿りの軒下で、子どもは何もせずただ座っている90秒。3回同じ構図に戻るたび、耳だけが少しずつ上がっている。
第一関門は子どもが「止まる」を覚えること
追いかけると擬態モードに入って石のように固まるので、追う限り永久に近づけない。誰も教えてくれないので、子どもは失敗の繰り返しから自分でルールを見つける。★歩み寄るのは子どもの側で、覚えるのも子どもの側。
画面ではこう見える1回目=手を伸ばした瞬間に固まる/2回目=にじり寄っても固まる/3回目=子どもが諦めて草の上に大の字で寝転がる。しばらく間があって、視界の端の草の塊が「ころん」と一回転して肩の横に来る。
どこから導かれるか擬態。近づくほど固まるという性質が、そのまま「近づき方を反転させないと通じない」という関門になる
90秒の種虫取り網を持った子が3回失敗し、4回目に網を置いて寝転がったら、向こうから転がって胸の上に乗ってくる。
耳が返事に見える(本人にその気はない)
音のする方に耳だけ向けるのは、音源の方向を測るためのただの癖。子どもはそれを相槌や返事だと受け取るが、モッチャルは言葉を分かっていない。★何を話しかけても反応が同じなので、観客だけが「通じていない」と分かる。
画面ではこう見える子どもが話しかけると、体も目も動かないまま片方の葉耳だけがくるりとそちらを向く。もう一度呼ぶと両耳が向く。まったく違う言葉でも、くしゃみでも、まったく同じ動きをする。
どこから導かれるか葉っぱの耳。方向探知のための機能が、人間側からは会話のリアクションに誤読される
90秒の種子どもが「好き?」「嫌い?」といろんな言葉を試して、どれにも耳が同じように動くのを見て、笑い出してしまう。
覚えるのは言葉でなく音の形
意味は分からないが、高低のパターンは覚える。口笛・缶を叩くリズム・自転車のベルなど、輪郭のはっきりした音だけが記憶に残る。だから「呼べば来る」ようになるが、それは名前を覚えたのではなく音の形を覚えただけ。
画面ではこう見える初回は3音目でやっと片耳が上がる。中盤は2音目で両耳。終盤は1音目で両耳がぴんと立ち、体が音の方へ転がり始める。音程を外すと、耳は一切動かない。
どこから導かれるか葉っぱの耳。「遠くの音が聞こえる」という得意が、人語ではなく音形の記憶という形でだけ人と結びつく
90秒の種下手な口笛を練習する子どもの90秒。何度吹いても草は動かないが、はじめて同じ音が出せた瞬間だけ、耳が2枚とも立つ。
手渡しが受け取れない/耳で挟む
短い手足では差し出された物を受け取れない。前足を精一杯伸ばしてじたばたした末に、諦めて葉っぱの耳を伸ばして挟み取る。★不便(手が届かない)と得意(耳で包める)が同じ一場面の中で対になる。
画面ではこう見える木の実を差し出されて短い前足を2本とも伸ばす→届かず体ごと前に倒れる→ひっくり返って手足をバタバタ→起き上がって、今度は葉っぱの耳を左右から回り込ませて木の実を挟む。
どこから導かれるかまんまる体型(短い手足=不便)+葉っぱの耳(包める=得意)
90秒の種子どもが差し出す高さを3回変えてみて、耳の高さに合わせた4回目だけ受け取ってもらえる。
白いお腹は最後まで見せない
緑と薄クリームの斑点は草に紛れるが、白い腹だけは草の中で浮く。だから普段は地面に伏せて隠しており、そこに手が来ると反射的に伏せる。★仰向けになるのは擬態を自分から解除する行為で、信頼の最終段階にあたる。
画面ではこう見える背中の斑点を撫でられても耳は水平のまま平気。手が腹側に回った瞬間、ぺたんと伏せて腹を地面に押しつけ、耳が横に折れる。終盤、自分からころんと仰向けになり——そのまま短い手足では起き上がれず、四本の足をバタバタさせる。
どこから導かれるか擬態。白い腹は唯一カモフラージュが効かない面なので、隠す/見せるが信頼の度合いそのものになる
90秒の種子どもが撫でていい場所を手探りで探す90秒。最後に自分から仰向けになった子が起き上がれなくなり、子どもが両手で戻してやる。
坂を登れないので運ばれる
まんまるなので坂を転がり降りるのは誰より速いが、短い手足では登り返せない。追いかけて来た結果、坂の下でじたばたして子どもに拾われる。★見送るのではなく、運ばれることでしか一緒にいられない。
画面ではこう見える子どもの帰り道を追って斜面をころころ転がり降りる→登ろうとして半歩ずり落ちる→ひっくり返って手足をバタバタ。抱え上げられている間は手足4本がぷらぷら垂れ、葉っぱの耳が重力で真下に広がって、まったく抵抗しない。
どこから導かれるかまんまる体型。転がれる(得意)と登れない(不便)が同じ形から出ていて、その差を子どもが埋める
90秒の種帰り道の坂で3回同じことが起きて3回とも子どもが戻してやり、4回目、モッチャルは坂の上に座ったまま転がらずにいる。
★通じた瞬間=耳をたたんで足の甲で寝る
耳を折りたたむのは眠るときだけの仕草。耳は擬態と警戒のためのセンサーなので、それをしまうのは「もう見張らない」という無防備の表明にあたる。★これをどこでやるかが、その回の到達点になる。
画面ではこう見える子どもの靴のすぐ横まで転がってきて、葉っぱの耳をぱたん、ぱたんと2回内側に折りたたむ。それを枕にして、頭を子どもの足の甲に乗せる。子どもは足を動かせなくなり、そのまま座り続ける。
どこから導かれるか葉っぱの耳。警戒の器である耳をしまう=警戒を解いた、が説明なしで画だけで伝わる
90秒の種迎えの声が遠くから聞こえているのに、足の甲の重みのせいで立てず、子どもが返事だけして座り続ける90秒。
大人には見えないのではなく気づかれない
大人に見えない超常の存在ではない。目線が高いので足元の草の塊をそもそも見ておらず、擬態が優秀なだけ。★これが「アイレベルを生物の高さに置く」というカメラ規約の、作品内での理由になる。
画面ではこう見える母親が同じ草むらの前を通り過ぎる腰の高さのカット。カメラがすっと地面まで下がると、草の中に黒目が2つ。子どもが指さすと、母親が視線を向けたその瞬間にモッチャルは完全静止し、ただの草に戻る。
どこから導かれるか擬態。魔法ではなく、視線の高さと静止能力という物理だけで「大人には見つからない」が成立する
90秒の種子どもが母親の袖を引いて指さすが、母親は草を見て笑って行ってしまい、子どもだけがもう一度しゃがんで目を合わせる。
しゃがんだ大人には見える
高さの問題でしかないので、膝をついた大人には子どもと同じものが見える。★大人=見えない側、という線を引かないことで、世界が子どもだけの幻ではなくなる。気づいた大人も、やはり何も言わない。
画面ではこう見える草取りでしゃがんだ祖父の顔と、草の中のモッチャルが同じ高さで正面から向かい合う1カット。祖父は数秒止まり、鎌を持ち直して、その一角だけ避けて刈り進める。刈り終わった庭に、丸い草の島がひとつ残る。
どこから導かれるか擬態。見える/見えないの境界が年齢ではなく「しゃがんだかどうか」なので、大人にも入口が開いている
90秒の種祖父が庭を刈る90秒。最後に残った刈り残しの島を、孫が見つけて不思議そうに覗き込む。

音(モッチャルが出す音/聞こえる音への反応)— 喋らない生物の唯一の発話設計14項目

モッチャルの音を「息/耳の葉ずれ/体と腹の不随意音」の3系統に分け、さらに「聞こえる音への反応」を無音とこもりで作る設計にまとめた(全14項目)。★核=耳が乾いた葉である以上、感情=耳の角度がそのまま音になる。つまりモッチャルは隠したい感情を音で漏らしてしまう生物で、これが喋らないキャラの発話設計になる。意図して出す音は「呼びかけのカサカサッ×2」だけで、あとは全部漏れている音。擬態は姿だけでなく音でも行い(周囲の草と同じリズムで耳を鳴らす/風が止んでも止め忘れる/腹が鳴って自分で壊す)、じたばたの音も短い手足が地面に届かないので「ぼす・ぱた」の2音しか出ない=本人は真剣だが解決になっていない。聞こえる側の設計として、耳で顔を覆うと観客の聞く環境音にもローパスがかかる(カメラが生物の目線なら音も生物の耳)、遠音は「耳が先に動く→数秒遅れて音が来る」で予知にしない、の2点を規約化した。制作上は、ヒアリングで確定した「シリーズの縛り=画風と音」に直結する資産として、寝息ループ(安否サイン)と「ふぃ〜」(毎話の締め=末尾フックの代替)を全話共通に固定し、残りはElevenLabs SFXで close mic・no reverb・モノラルの素材を各2〜4バリエーション作って使い回す前提にしてある。

「ふす」— 返事の鼻息
呼ばれた時に返す、鼻から抜ける0.4秒の短い呼気。声帯はほとんど使わず、まんまるの体がひと息ぶんしぼむ分だけ空気が出る。これがモッチャルの「うん」で、全編でいちばん多く鳴る音。【EL】"very short soft nasal exhale from a small round animal, breathy, unpitched, dry, close mic, mono, no reverb" 0.4s/強弱2種
画面ではこう見える呼ばれても振り向かない。体がひと回り小さくしぼみ、そのしぼみに押されて耳の先が1cmだけ下がる。動くのはそれだけで、次の呼びかけでまた同じだけしぼむ。
どこから導かれるかまんまる体型 — 体そのものが空気袋なので、声を張るより先に体積が抜ける。鳴くのではなく「しぼむ音」しか出せない
90秒の種縁側の子どもが名前を呼ぶたび、姿は見えないまま草むらから「ふす」だけが返ってくる90秒。
「もちゅ」— 喉で潰れる喜びの有声音
嬉しさが越えた時だけ漏れる、喉の奥で潰れたこもった有声音。体が共鳴箱なので低く丸く、近くの人にしか届かない。★体が弾むより先に音が出るので、観客は音で喜びを知り、遅れて画がついてくる。【EL】"muffled low squeak of a small round creature, throat-compressed, warm, 0.5s, close mic, no reverb"
画面ではこう見える耳が両方ぱたっと跳ねる→0.3秒遅れて体が一度だけ地面から浮く。着地したあと、自分が出した音に驚いて数秒固まり、耳だけが左右バラバラに揺れる。
どこから導かれるかまんまる体型 — 球体が共鳴箱になるため鋭い声が出ず、こもった潰れ声しか出ない
90秒の種差し出された木の実に触れる直前、まだ受け取っていないのに「もちゅ」が漏れてしまう回。
耳のカサ — 感情が勝手に鳴ってしまう
耳が乾いた葉なので、角度が変わるたびに必ず葉ずれが鳴る。感情=耳の角度である以上、★モッチャルは感情を音で漏らしている。迷えば左右バラバラに、驚けば一気に、我慢すれば細かく震えて鳴る。【EL】"single dry leaf rubbing against soft fur, tiny, 0.2s, close mic, mono, no reverb" を角度違いで4種
画面ではこう見える画面にモッチャルを映さない。暗い草むらから「カサ…(間)…カサ」と左右にずれた位置で鳴り、音の位置と間だけで迷っているのが分かる。決心した瞬間だけ、2枚が同時に鳴る。
どこから導かれるか葉っぱの耳 — 感情の器が乾いた葉なので、感情が動く=音が出る
90秒の種最後まで姿を見せず、耳の音の位置だけで気持ちを追わせる回。
「カサカサッ」×2 — 人を呼ぶ音(=ねえ)
喋れないので、人を呼ぶ時は耳を勢いよく2回振って音を立てる。これがモッチャルの「ねえ」。★意図して鳴らす唯一の音で、無意識のカサ(項目3)より速く・強く・必ず2回きり。3回鳴らすことは絶対にない。【EL】"two quick sharp dry leaf shakes, 0.15s each with 0.2s gap, crisp, close mic"
画面ではこう見える相手の背中に向けて耳を横に強く振る。気づかれないともう一度振り、今度は体ごと振り回されて自分が半回転してしまう。回った先で正面を向き直してから、また2回振る。
どこから導かれるか葉っぱの耳 — 音の出せる器官が耳しかないので、呼びかけも耳でやるしかない
90秒の種落とし物を知らせたいのに、耳を振るたび相手が一歩ずつ遠ざかっていく90秒。
風の真似カサカサ — 擬態の音(止め時が分からない)
隠れる時は、周りの草が風で鳴るのと同じリズムで耳を鳴らし、音まで擬態する。★問題は止め時で、風が止んでも1〜2秒鳴らし続けてしまう。本人は完璧にやったつもりでいる。【EL】環境の"wide grass field rustling in wind, 6s"と、同質の"single small leaf rustle, rhythmic, 2s"を別トラックで作り、風トラックだけ先に切る
画面ではこう見える風が抜けて野原全体が止まった後、画面手前の一株だけがカサ、カサ、と2回揺れる。揺れが止むと、その株から耳の先が2枚だけ出ているのが見える。
どこから導かれるか擬態 — 姿を草に化けさせるなら音も化けさせる必要がある。だが同期の解除は本人には判断できない
90秒の種追い払われかけたモッチャルが、静まり返った野原で一株だけ揺れ続けている回。
濡れた耳の「ぺちゃ」
雨に濡れると耳の音が乾いた「カサ」から湿った「ぺちゃ」に変わり、重くて持ち上がらなくなる。★不便の対=濡れた耳は音を立てないので、雨の日だけは擬態が完璧になる。音を聞けば天気と機嫌が同時に分かる。【EL】"wet leaf slapping softly against damp skin, dull, no crispness, 0.3s, close mic" +雨のルームトーン
画面ではこう見える耳を持ち上げようと頭を振る→ぺちゃ、と落ちる。3回やって諦め、そのまま動かなくなる。動かないので結果として誰にも見つからない。
どこから導かれるか葉っぱの耳 — 葉は濡れると重く、音が鈍る。不便(動かせない)と得意(無音で隠れられる)が同じ現象から出る
90秒の種雨宿りに失敗した日、鳴らない耳のまま人生でいちばん上手に隠れられてしまう回。
「ごろ…ぱた」— 転がる音は耳が拍を打つ
手足が短いので歩くより転がる。体はマットで転がる音がほとんど出ないが、1回転ごとに耳が地面を叩くので「ぱた」が拍になる。★拍の間隔だけで速度・距離・坂の有無が分かる(詰まる=焦り、間延び=失速)。【EL】"soft round body rolling on grass with a light dry leaf slap on every rotation, 3s, close mic" を速/遅2種
画面ではこう見える画面外から ぱた…ぱた…ぱた と拍が近づく。フレームに入る一瞬だけ体が見え、そのまま転がり抜けて拍が遠ざかる。カメラは一度も追わない。
どこから導かれるかまんまる体型 — 球なので転がるのが正規の移動。葉っぱの耳が地面を打つことで、無音の移動に拍がつく
90秒の種カメラを固定したまま、通り過ぎる転がり音の往復だけで一日を描く回。
足音がない — 存在が音にならない
短い手足が体に埋まっていて接地が柔らかいため、歩いても足音が出ない。★だから存在は耳の音でしか分からず、人の真後ろに立っても気づかれない。気づかれた瞬間、相手が飛び上がり、それに驚いてモッチャル自身もひっくり返る。【EL】ここは音を作らない。足音トラックは空にし、代わりに"very faint grass brush, -30dB"だけを置いて「無音」を意図的に聞かせる
画面ではこう見える人が振り向いた時、もう足元にいる。人が声を上げる→モッチャルが後ろに転がる→耳だけが先に起き上がり、遅れて体が戻る。
どこから導かれるかまんまる体型 — 短い手足と低い重心で接地圧が分散するため、踏む音が発生しない
90秒の種一日中ついて歩いていたのに、日が暮れてからやっと気づかれる回。
「ぷす……」— 寝息(耳がふくらむ)
寝る時は耳を折りたたんで枕にするので、寝息が耳の内側でこもって少しくぐもる。1.5秒周期のループで、呼気ごとに畳んだ耳がわずかに浮いて戻る。★この音が鳴っていれば無事、というシリーズ共通の安否サインに使える。【EL】"tiny muffled sleeping breath of a small creature, soft nasal, gentle, 1.5s seamless loop, very close mic"
画面ではこう見える丸まった体の上で、折りたたまれた耳の先が呼吸に合わせて1cmだけ浮いては戻る。ほかはどこも動かない。強い音がすると、浮きの周期が一度だけ乱れる。
どこから導かれるか葉っぱの耳 — 畳んで枕にするので、寝息が耳の内側で反響してこもる。耳が呼吸の可視化装置になる
90秒の種人が何度も覗きに来ては、耳が浮いているのを確かめて黙って帰っていく90秒。
「きゅるる」— 腹の音が擬態を裏切る
体の大半が腹なので、鳴ると本人の意思と無関係に大きく響く。★擬態中に鳴れば位置が完全にバレる、モッチャル最大の弱点。鳴った後、本人が自分の腹を見下ろして固まる。【EL】"small stomach growl, low gurgle, resonant, 1.2s, close mic" 強弱2種
画面ではこう見える完全に草に化けて微動だにしない状態から、きゅるる、と鳴る。耳だけがゆっくり持ち上がって顔を覆う(見なければバレていないことにできる)。腹はもう一度鳴る。
どこから導かれるかまんまる体型 — 腹が体の大半を占めるため共鳴して大きく鳴る。擬態(無音でいること)を体の内側から破る
90秒の種台所のいい匂いの前で、隠れているのに腹だけが返事をしてしまう回。
遠音への先行反応 — 数秒の無音
葉の耳は遠くの音を拾う。観客にまだ聞こえていない音に、耳だけが先に向く。★演出は「3〜5秒の無音(耳だけ動く)→遅れて本当に低い音が来る」。予知能力ではなく、ただ耳がいいだけ、という線を必ず守る。【EL】"distant low rumble slowly approaching, heavy low-pass, far, 5s"(遠雷・荷車・雨脚)を作り、耳の動きより3〜5秒遅らせて置く
画面ではこう見える体は寝たまま、耳が片方だけ同じ方向へゆっくり回る。人間はまだ何も気づかず洗濯物をたたんでいる。音が到達した瞬間に、もう片方の耳も同じ向きへ回る。
どこから導かれるか葉っぱの耳 — 面積の大きい葉が集音する。得意(遠くが聞こえる)が「無音の芝居」として画に出る
90秒の種洗濯物を取り込むかどうかを、人がモッチャルの耳の向きだけを見て決める回。
耳で顔を覆う=世界の音がこもる(POV音響)
大きな音が来ると耳で顔を覆う。★その瞬間、観客が聞く環境音にもローパスがかかってこもる=カメラが生物の目線なら、音も生物の耳。覆っている間じゅう世界は遠く、耳を開けた瞬間に元の明るさで戻る。【EL】同一の環境音を通常版と"muffled, heavy low-pass, as if covered by thick leaves"版の2本作り、耳の開閉にクロスフェードを合わせる
画面ではこう見える雷や花火の直前、耳が前に倒れて顔を完全に隠す。丸まった体だけが小刻みに震え、静かになると耳が数センチだけ開いて片目が覗く。まだ怖いともう一度閉じる。
どこから導かれるか葉っぱの耳 — 顔を覆えるサイズの耳が、そのまま音のフィルターになる。擬態(見えなければ隠れられる)が聴覚にも及ぶ
90秒の種祭りの夜、賑やかな音がモッチャルの耳の開閉に合わせて何度もこもっては戻る回。
「ぼす・ぱた」— ひっくり返ってじたばたの音
ひっくり返ると起き上がれない。手足が短くて地面に届かないので、じたばたの音は「ばたばた」にならず、背中が地面を打つ「ぼす」と、届く耳だけが地面を叩く「ぱた」の2音だけになる。★本人は本気で怒っているのに音が可愛いので、観客は深刻に受け取れない。【EL】"soft round body thumping dully on grass, plus light dry leaf slaps, irregular rhythm, 2.5s, close mic"
画面ではこう見える仰向けで短い手足が空を掻く(何にも当たらないので無音)。地面に触れているのは背中と耳だけで、ぼす、ぱた、ぼす、と不揃いに鳴る。疲れると音の間隔が延びていく。
どこから導かれるかまんまる体型 — 短い手足が地面に届かないため、抗議の音を手足で出せない。体幹と耳が代わりに鳴る
90秒の種誰も見ていない場所で盛大に駄々をこね、誰も来ないので自分でやめる90秒。
「ふぃ〜」— 終わりの長い息(シリーズ共通の締め音)
満足した時にだけ出る、2秒かけて抜ける長い呼気。体が横に広がって平たくなる分だけ音が続く。★毎話これで閉じる=末尾フックを置かない代わりの「終わりの音」として、シリーズ全体を縛る音にする。【EL】"long slow soft exhale of a small creature, breathy, gently decaying, 2s, close mic, no reverb"
画面ではこう見える座ったまま体がゆっくり横に広がり、それに合わせて左右の耳が地面に平たく伸びきる。最後に耳の先が一度だけぴくりと動いて、止まる。
どこから導かれるかまんまる体型 — 息の長さ=体積のしぼみ。丸い体が平たくなるまでの時間が、そのまま音の長さになる
90秒の種何も解決していないのに本人だけが満足してしまい、その息のまま話が終わる回。

質感手触りと質感14項目

「もっちゃり」を形容詞ではなく物理で定義した:押した跡が三拍遅れて戻る復元速度=もっちゃり(項目1)。その上で★体と耳の質感を対立させた(体=ビロード/ぬるい/水を弾く/押すと鳴る、耳=つるん/外気温/水を吸う/かさと鳴る)ので、触っただけで「耳が主役」だと画で分かる。耳は感情の器であると同時に水分計なので、濡れ(角度が作れず感情が読めなくなる)・乾き(巻いて集音筒になる)・季節(秋は赤茶・かさっと鳴る)がそのまま芝居になり、最後の項目14では耳の垂れが「落胆」と誤読される一度きりの仕掛けに使える。画に出ない匂いと体温は、必ず子どもの手と顔の反応(手を嗅ぐ/頬をつける/びくっと引く)に翻訳した。不便を書いた項目には全て対の得意を置き、かわいそうにしていない。導出元の内訳=葉っぱの耳6/擬態5/まんまる体型4(重複あり、主従を明示)。お腹の白と耳の角度文法という確定事項は一切動かしていない。

「もっちゃり」の正体=三拍遅れて戻る
押してもゴムのように跳ね返らず、粘土のように凹んだままでもない。指を離してから一拍おいて、へこみがゆっくり平らに戻る。★もっちゃりは柔らかさでも弾力でもなく「復元の遅さ」で定義する。この一項目が他の全質感の基準になる。
画面ではこう見える子どもが人差し指でお腹を押して離す→指の跡がしばらく残る→凹みがゆっくり膨らんで消える。子どもは消えるまで見届けてから、もう一度押す。押されている間、モッチャルの耳は水平に垂れたまま動かない(=嫌がってはいない)。
どこから導かれるかまんまる体型(球体=どこを押しても同じ挙動になる。シリーズ共通の体型ルールを、初めて手触りの言葉で定義したもの)
90秒の種縁側で、子どもがモッチャルのお腹に指の跡をひとつずつ増やしていき、全部が消えるまで並んで待つ90秒。
ビロードの毛並み=撫でた跡が明るく残って、勝手に消える
表面は苔のような短い毛に覆われ、寝ている向きがある。順に撫でれば濃い緑、逆に撫でれば下の薄クリームが立ち上がって手形が白っぽく浮く。数秒で毛が寝て、跡はひとりでに消える。
画面ではこう見える子どもが背中を逆撫でして手の跡を描く→跡が数秒で消える→また描く。撫でられている間にモッチャルの耳はとろんと垂れて広がっていき(=眠い側に落ちる)、最後は完全に平たくなる。
どこから導かれるか擬態(毛の向きで明度が変わる=日向と日陰、風で揺れる草の明滅に紛れるための機能)
90秒の種草はらで、子どもがモッチャルの背中に指で自分の名前を書くが、書き終わる前に頭の一文字から消えていく90秒。
耳だけ毛がない — つるんと薄く、光が透ける
体はビロードなのに、葉っぱの耳だけは毛がなくつるりとしている。薄いので日にかざすと光が透け、葉脈のような筋が浮く。指で挟むとしっとり冷たく、押したときの戻りは体と逆に速い。★体と耳で手触りを対立させることで、触っただけで「耳が主役」だと分かる。
画面ではこう見える子どもが耳を1枚つまんで太陽にかざす→耳が緑に光って子どもの顔まで緑になる→モッチャルはされるがままだが、もう片方の耳だけがぴくぴく動く(=落ち着かない)。
どこから導かれるか葉っぱの耳(一点の特異。体と質感が違うこと自体が、この子の定義を画で説明している)
90秒の種夕方、子どもが耳越しに西日をのぞき込み、透けた葉脈を指先でなぞっていく90秒。
体温の地図 — お腹はぬるい、耳は外気温、手足の裏は冷たい
お腹は人肌よりぬるい湯たんぽ程度で、一日中ほぼ同じ温度を保つ。葉っぱの耳だけは外気温そのままで、朝は冷たく昼は生ぬるい。短い手足の裏はしっとり冷たく、触ると少し吸いつく(★おかげで濡れた石の上でも滑らない)。
画面ではこう見える子どもが朝いちばんに耳を触ってびくっと手を引く→次にお腹へ頬をつけて、そのまま動かなくなる。冬、はしゃいだモッチャルの耳が子どもの首筋に当たり、子どもが飛び上がる(モッチャルは何が起きたか分かっていない)。
どこから導かれるかまんまる体型(球=熱が逃げにくく、お腹が常温安定する)/副:葉っぱの耳(薄いので外気温に一致する)
90秒の種寒い朝、子どもが自分のマフラーを自分ではなくモッチャルの耳にだけ巻いてやる90秒。
濡れると耳が真っ先に落ちて、感情が読めなくなる
体の毛は水を弾いて玉が転がるが、葉っぱの耳だけは水を吸って重くなる。頭にぺたりと貼りついた耳は角度を作れないので、この子は雨の日だけ感情表現を失う。★対の得意=貼りついた耳は顔を完全に覆えるので、「隠れる」だけは雨の日が最強になる。
画面ではこう見える雨。短い手で片耳を持ち上げようとするが、手を離すとべちゃっと落ちる。三回やって諦め、そのまま丸くなる。子どもには何を考えているのか分からず、顔をのぞき込むしかない。
どこから導かれるか葉っぱの耳(感情の器そのものが濡れで機能停止する=この子だけが背負える不便)
90秒の種にわか雨の中、子どもが自分の帽子をモッチャルの頭に乗せ、耳がゆっくり持ち上がるまで軒下で待つ90秒。
乾くと耳がくるんと巻いて、集音筒になる
濡れた耳は乾く途中で本物の葉のように縁から巻く。本人は気づかず、途中で気づいても頭を振るだけでは戻らない。★対の得意=巻いた耳は筒になるので、その日は普段より遠くの音に気づく。
画面ではこう見える日なたで乾かしている間に耳の縁がじわじわ巻く→気づいて頭をぶんぶん振る→戻らない→巻いたまま、遠くの音のほうへ筒になった耳だけがぴたっと向く。
どこから導かれるか葉っぱの耳(葉と同じ乾き方をする。不便と得意が同じ現象の裏表になっている)
90秒の種川遊びのあと、乾きながら巻いていく耳が遠くの祭り囃子を拾い、子どもより先に立ち上がる90秒。
匂い — 押すと青い草、日向のあとは干した布団
普段はほとんど匂わないが、抱きしめて体が潰れると青い草の匂いが立つ。日向で寝たあとは干した布団の匂いに変わる。★匂いも擬態の一部で、草の中では鼻でも見つけられない。
画面ではこう見える子どもが抱きしめ、そのまま顔を埋めて動かなくなる。離れたあと自分の手のひらを嗅ぎ、匂いが移っているのに気づいて驚く。小さな虫が草と間違えて背中に止まり、モッチャルは背中の虫に気づいていない。
どこから導かれるか擬態(見た目・色だけでなく匂いまで草に寄せている。押すと匂うのは、踏まれた草と同じ振る舞い)
90秒の種干した洗濯物の下で昼寝したモッチャルを、子どもが目ではなく匂いだけで探し当てる90秒。
触られた瞬間に固まる(擬態の反射)
不意に触られると呼吸ごと止めて完全に静止する。★このときだけは耳も止まる ― 接触の驚きでは擬態の反射が耳の文法より先に来る(音や動く物への驚きでは、規定どおり両耳が真上に立つ)。数秒おいて片耳だけがそっと上がり、相手を確かめる。
画面ではこう見える初対面=触られた瞬間に石のように固まり、二呼吸おいてから片耳がゆっくり上がる。終盤=手が伸びてくる前から耳が上がっている。★固まってから耳が上がるまでの秒数が、そのまま懐き具合として画に出る。
どこから導かれるか擬態(動かないことが第一の防御。だから触られても逃げないし、振り払いもしない)
90秒の種草むらで石だと思って腰かけた子どもの下で、固まったまま耳だけが少しずつ上がっていく90秒。
抱えると形が変わる — ハマる位置が一つだけある
持ち上げると中身が下に垂れて洋梨の形になり、腕の間からお腹がはみ出す。短い手足はぶらぶらして支えにならず、抱えるたびにずり落ちる。★対の得意=体が相手に沿うので、一箇所だけぴたりと安定する位置が必ずある。
画面ではこう見える子どもが三回抱え直す。三回目でお腹が肩のくぼみにはまり、二人とも動かなくなる。抱えられている間、短い手足はずっとぷらぷらしていて、耳だけが子どもの背中側でぱたりと落ち着く。
どこから導かれるかまんまる体型(短い手足=しがみつけない/球=どこにでも沿う。不便と得意が同じ体から出ている)
90秒の種抱えて坂道を登る子どもが途中で三回抱え直し、四回目からはもう直さなくなる90秒。
季節で背中が変わる(夏は斑点が出る/冬は毛に埋もれる)
夏は毛が短く背中の表面が張り、薄クリームの斑点がくっきり出る。冬は毛が伸びて背中の緑がぼやけ、斑点が毛に埋もれて枯れ草の色に近づく。★変わるのは背中側だけで、お腹の白は一年中変わらない(隠れるときはお腹を地面に伏せるので、白は表に出ない)。
画面ではこう見える夏の回では子どもが背中の斑点を目印に一発で見つける。冬の回では同じ草むらを何度も通り過ぎ、枯れ草の中で耳がぴくりと動いてやっと気づく。
どこから導かれるか擬態(背景が季節で変わるので、体の側が追いかける。背中=隠す面、お腹=隠れているとき見えない面)
90秒の種冬の草むらで、去年の夏と同じ場所を探しているのに見つけられない子どもの90秒。
秋は耳の縁から赤茶に染まり、触るとかさっと鳴る
秋になると葉っぱの耳の縁だけが赤茶に変わり、乾いた紙のような手触りになる。触れると小さく「かさ」と鳴る。★落ち葉の上では耳が浮かないので、一年でいちばん見つからない季節になる。
画面ではこう見える落ち葉の山に飛び込んだきり出てこない。子どもが葉を一枚ずつどけていき、最後にどけようとした一枚がかさっと自分から動く。
どこから導かれるか擬態(周囲の落ち葉と同じ変化を体でなぞる)/副:葉っぱの耳(染まるのも鳴るのも耳だけ)
90秒の種落ち葉かきの日、掃き集めた山の中から一枚だけ動く葉を見つけ出すまでの90秒。
押すと鳴る体(ふす、と抜けて、かさ、と鳴る)
お腹を押すと空気の抜けるような短い「ふす」が鳴る。耳を擦ると乾いた「かさ」が鳴る。★本人は鳴るたびに驚いていて、自分の体から出ている音だと分かっていない。
画面ではこう見える子どもがお腹をリズムよく押す→鳴るたびにモッチャルの耳が片方ずつ跳ねる→だんだん楽器みたいになる→最後にモッチャルが自分で自分のお腹を押し、鳴った音に驚いて後ろに転がる(そして短い手足では起き上がれない)。
どこから導かれるかまんまる体型(球の中の空気。押す=鳴るは体型から自動的に出る性質)
90秒の種退屈な午後、子どもがモッチャルのお腹で拍子を取りながら鼻歌をひとつ作り上げる90秒。
乾いた日は、耳に何でもくっつく
空気が乾くと葉っぱの耳に枯れ草・綿ぼこり・子どもの髪の毛が張りつく。平たく薄い面なので、乗ったものは落ちない。★本人は耳の上のものに気づかないし、くっついたぶん擬態が完成するので困ってもいない。
画面ではこう見える話の冒頭から耳に枯れ葉が一枚ついていて、本人は最後まで気づかない(観客だけが気づいている)。終盤、子どもが黙って取ってやる。モッチャルは礼をせず、ただ体を寄せる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(平たい面=物が乗る)/副:擬態(乗った物がそのまま迷彩として機能する)
90秒の種風の強い乾いた日、耳に乗るものが一つずつ増えていき、最後に子どもが全部そっと取ってやる90秒。
乾きすぎると耳が下がる — 落胆と読み違えられる
暑い日が続くと耳が水を失って自然に垂れる。耳の角度の文法では「落胆」に見えるが、本人は落ち込んでいない。★対の得意=水たまりに耳の先を浸すだけで数秒で戻る。感情の器が体調計も兼ねている、というこの子だけの二重性。
画面ではこう見える耳がぺたんと下がっている→子どもが撫でても、食べ物を出しても戻らない→水たまりに耳の先だけが浸る→耳がゆっくり持ち上がって水平に戻る→子どもの顔が明るくなる(★慰めるのではなく水をやればいい、と子どもが学ぶ画)。
どこから導かれるか葉っぱの耳(葉と同じで水分で張りが決まる。感情表現の器が、そのまま体の状態も語ってしまう)
90秒の種猛暑日、元気がないと思い込んだ子どもがあれこれ試した末に、最後はバケツ一杯の水で答えにたどり着く90秒。

成長時間と成長14項目

モッチャルの一生と一日を、【葉っぱの耳】=「本物の葉と同じ時間割で動く器官」として設計した14項目。葉なので、生まれたては巻いていて(=感情が出せない)、暖まるとほどけ(=話の中で成長できる)、朝は露で重く、正午は丸まり、夕方は透け、夜は勝手に畳まれる。年輪は耳の縁の刻みに出て、年寄りの耳は虫食いだらけになるが、それゆえ本物の枯れ葉と見分けがつかず擬態は生涯で最も完成する。まんまる体型は加齢で「たわんだ塚」に崩れ、転がれなくなる代わりに子どもの個体の定位置になる。全項目で不便に対の得意を置き、解決になっていないじたばたを1つずつ入れた。★特に「夕方だけ耳が透けて擬態が破れる」は、この作品で人間の子どもと出会いが起きる理由そのものになるので推し項目。

卵は「芽」の形をしている
モッチャルの卵は産み落とされるのではなく、苔の中に半分埋まった緑の小さなふくらみとして見つかる。殻は柔らかく、周りの新芽とまったく見分けがつかない。産んだ本人でさえどれが自分の卵か分からないので、誰も見張らない。
画面ではこう見える苔の斜面に同じような緑のふくらみが十個ほど並んでいて、そのうちの一つだけが、風もないのに小さく上下している。カメラが寄ると、てっぺんから細い葉の先が二本、ほんの少しだけ突き出て、ぴくりと震える。
どこから導かれるか擬態(卵の段階からすでに地面に紛れている)+葉っぱの耳(唯一のはみ出しが、突き出た二本の耳の先)
90秒の種子どもが苔の斜面にしゃがみ、動くふくらみを一つだけ見つけて、90秒それが動くのをただ待つ。
生まれたては耳が巻いている
孵ったばかりの耳は、シダの新芽のようにくるりと巻いた筒で、角度がつかない。つまり生まれてしばらくは、この生き物は耳で感情を出せない。何を思っているのか読めない期間が、必ず一度ある。
画面ではこう見える驚いても耳は動かず、巻いたまま先だけが震える。代わりに体ごと後ろへころんと転がって、短い手足をばたばたさせる。嬉しいときもまったく同じ動きで、転がる向きが前になるだけ。
どこから導かれるか葉っぱの耳(未展開=感情器官がまだ使えない)+まんまる体型(耳が使えない分、感情が全身の転がりに出る)
90秒の種転がってばかりの赤ちゃんを子どもが「怒っている」と勘違いし、90秒かけて転がる向きの違いに気づく。
★耳がひらく(1話の中で起きる成長)
巻いた耳は、暖かさと乾きで少しずつほどけていく。数日かかることもあれば、日向に置かれた午後だけでほどけ切ることもある。ほどけた瞬間から、その個体は生まれて初めて感情を角度で出せるようになる。
画面ではこう見える巻きが一巻きぶんゆるむたび、本人がびっくりして体を跳ねさせる。ほどけ切った直後の一発目の「嬉しい」は必ず大振りで、両耳が真上に立ちすぎてバランスを崩し、そのまま後ろに転がる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(葉が展開する=感情器官が起動する、という一本道)
90秒の種雨あがり、子どもが赤ちゃんを日の当たる石の上に置いて、隣に座っているだけの90秒。最後の10秒で耳がひらく。
子どもの個体は擬態が下手
擬態は生まれつきではなく、体で覚える技術。子どもの個体は「隠れる=顔を隠す」だと思っているので、顔だけ苔に突っ込んで、白いお腹と丸い背中を丸出しにする。人間の子どもに見つかるのが、いつも子どもの個体なのはこのため。
画面ではこう見える苔に顔を埋めて微動だにしない赤ちゃん。その真横で、同じ場所にいるはずの成体は輪郭が完全に消えている。見つかっても赤ちゃんは顔を上げず、耳の先だけを人間のほうへ向ける。
どこから導かれるか擬態(技術が未習得)+まんまる体型(丸い背中と白い腹は、顔を隠しても隠れてくれない)
90秒の種「見つかる子はいつも子どもだ」という理由に、90秒の終わりで観客だけが気づく回。
成長すると耳が厚くなり、芝居が小さくなる
若い葉は薄く軽いのでよく動くが、年を重ねた耳は厚く硬くなり、同じ感情でも動く角度が小さくなる。喜びの量が減るのではなく、外に出る量だけが減っていく。だから成体の感情は、寄らないと読めない。
画面ではこう見える若い個体は嬉しいと両耳をぱたぱた跳ねさせ、体ごと弾む。同じ場面で成体は、耳の先が二センチだけ上がって、ゆっくり水平に戻る。それだけ。
どこから導かれるか葉っぱの耳(葉が厚く硬くなる=感情の振れ幅がそのまま物理的に減る)
90秒の種若い個体と成体を並べ、二匹が同じだけ喜んでいると子どもが気づくまでの90秒。
年寄りの耳は虫食いと欠けだらけ/だから擬態が一番うまい
古い耳には縁の欠けと小さな穴が増える。雨の日は穴から水が落ちて頭が濡れるし、遠くの音も少し聞き取りにくい。ただし本物の古い葉と区別がつかなくなるので、擬態の完成度は生涯で最も高くなる。
画面ではこう見える逆光で耳に葉脈が透け、穴を通った光の点が頭の上で揺れている。雨粒が穴を抜けて眉間に落ちるたび、一度だけまばたきをするが、耳はまったく動かさない。
どこから導かれるか葉っぱの耳(老化=葉の傷み)+擬態(傷んだ葉ほど本物に見えるという逆転)
90秒の種子どもが古株の前を三度通り過ぎ、四度目に雨だれの落ち方だけを頼りにそこにいると気づく90秒。
耳の縁の刻みが年の数(寿命が画に出る)
一年に一度、耳の縁に浅い切れ込みが一つ増える。多い個体で二十前後まで数えられる。数えれば年齢が分かるが、本人にはその自覚がまったくない。
画面ではこう見える子どもが指で縁の刻みを一つずつなぞっていく。なぞられるたびに耳の先がぴくりと逃げるが、本体はその場から動かない。数え終わると耳がすっと水平に戻る。
どこから導かれるか葉っぱの耳(年輪にあたるものが、耳の縁の形として外から見える)
90秒の種数える指と、逃げる耳の先だけ。90秒ほぼクロースショットで通す回。
年寄りは丸から「たわんだ塚」になる
年を取ると体が下へ広がり、まんまるというより低い塚の形になる。もう転がれないし、ひっくり返ったら自力では戻れない。代わりに風でも動かず、上に何を乗せても崩れないので、子どもの個体の定位置になる。
画面ではこう見える塚の上に赤ちゃんがよじ登ってはずり落ちる。五回繰り返されても老個体は動かず、ずり落ちる側の耳だけがその都度わずかに傾いて、落ちた位置を追う。
どこから導かれるかまんまる体型(シリーズ共通の丸さが、加齢で崩れる=転がる特権を失う)
90秒の種老個体の背中で赤ちゃんが滑り台をしているだけの90秒。人間の子どもは最後まで手を出さない。
年寄りの背中には本物の苔が生える
動かない時間が長くなると、背中に本物の苔や小さな芽が根を下ろす。手足が短いので自分では掻き落とせず、岩に背中をこすりつけるが、届かない場所の芽はそのまま育つ。擬態のつもりはないのに、結果として地面と一続きになる。
画面ではこう見える背中の芽を落とそうと岩に体をこすりつけ、勢い余って横倒しになり、短い手足をばたばたさせる。やっと起き上がったあと、芽はまだ同じ場所に生えている。
どこから導かれるかまんまる体型(短い手足では背中に届かない)+擬態(結果として最も完成した擬態になる)
90秒の種子どもが背中の芽に水をやり、老個体が一度だけ耳を上げる90秒。
朝は耳が濡れて動かない
夜のあいだに露を吸った耳は重く、朝いちばんは地面に貼りついて持ち上がらない。感情を出す部位が使えないので、朝のモッチャルは何を考えているのかまったく読めない。ただし乾くまでは濡れた草と完全に同じ見え方になるので、一日でいちばん安全な時間でもある。
画面ではこう見える耳を上げようとして、耳が動かず体のほうが持ち上がり、そのまま前につんのめって転ぶ。転んでも耳は地面に貼りついたまま。日が高くなると、まず片方の先だけがぺりっと剥がれる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(濡れた葉は重い)+擬態(濡れているあいだは草と完全に同化する)
90秒の種朝の草むらで、子どもが「濡れた葉っぱ」を一枚だけつまみ上げてしまう90秒。
正午は耳を筒に巻いて縮む(赤ちゃんに見える)
日差しの強い時間帯は、水分を守るために耳を筒状に巻き、体を縮めてやり過ごす。この姿は生まれたての赤ちゃんとほぼ同じ形なので、成体でも子どもに見えてしまう。本人は暑いだけなので、何を言われても動かない。
画面ではこう見える耳が根元から筒に巻かれ、緑のかたまりになる。手を出しても筒の先がわずかに震えるだけ。日が傾くと巻きがゆっくりほどけ、小さかったはずの塊がいきなり大きな体に戻る。
どこから導かれるか葉っぱの耳(暑さで葉が巻く)+擬態(巻くと輪郭が減って、ただの緑の塊になる)
90秒の種昼、子どもが「赤ちゃんを見つけた」と思って抱き上げ、腕の中でほどけていく90秒。
★夕方だけ耳が透ける=擬態が破れる唯一の時間
低い西日に逆光で照らされると、耳が透けて葉脈が光り、その二枚だけが周りの草と違う色に浮かび上がる。この時間だけ、隠れているモッチャルの居場所が分かる。人間の子どもとの出会いは、たいてい夕方に起きる。
画面ではこう見える一面の草の中で、二枚だけが黄緑に光って浮かぶ。その二枚が同じ方向へゆっくり傾くと、光り方が変わる。日が沈むと、また草と区別がつかなくなる。
どこから導かれるか擬態(一日で唯一破れる条件)+葉っぱの耳(薄い葉だから透ける)
90秒の種帰り道の子どもが光る二枚を見つけて立ち止まり、近づくうちに日が沈んで見えなくなる90秒。
夜は耳が勝手に顔に畳まれる
日が落ちると、耳は本人の意思と関係なく前に折れて顔を覆う。これが就寝の合図で、畳まれてしまえば何も見えず、感情も出せない。起きていたくても、体のほうが先に店じまいをしてしまう。
画面ではこう見える見たいものがあるのに、耳がゆっくり顔に落ちてくる。短い両手で耳を押し上げようとするが、届くのは耳の下半分だけで、押し上げたそばからまた落ちる。三回やって、最後は畳まれたまま前にぱたんと倒れる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(就眠運動=夜になると葉が閉じる)+まんまる体型(短い手足では耳を支えきれない)
90秒の種子どもが花火を見せたいのに、隣で耳が畳まれていくのを止められない90秒。
秋、耳の縁が色づくと夏の隠れ場所が合わなくなる
秋になると耳の縁からクリーム色〜赤みに変わる。体は緑のままなので、夏じゅう隠れていた苔の上では耳だけが浮いてしまう。本人は色が変わったことに気づいていないので、同じ場所に戻り続ける。
画面ではこう見える苔の上にうずくまるが、色づいた耳だけがはっきり見えている。見つかるたびに驚いて場所を変え、しばらくするとまた同じ苔に戻ってくる。落ち葉の上に置かれると途端に輪郭が消え、本人だけがきょとんと耳を左右バラバラに動かす。
どこから導かれるか擬態(背景のほうが変わったのに、本人の更新が追いつかない)+葉っぱの耳(色づくのは耳だけ)
90秒の種子どもが黙って落ち葉をひと掴み、苔の上に撒いてやるだけの90秒。

失敗失敗と不器用さ18項目

モッチャルが日常的にやらかす失敗を18項目。導出元の内訳は【擬態】8/【葉っぱの耳】7/【まんまる体型】3。全項目を「本人は真剣、でも解決になっていない」形に統一し、不便には必ず対の得意か無自覚さを添えて“かわいそう”で終わらせていない。visible_behaviorは expressions_v3 の耳9状態の語彙(両耳が真上に立つ=驚き/細かく震える=我慢/ぱたぱた跳ねる=嬉しい/ぺたんと下がる=落胆/片耳だけ跳ねる=反応/両耳を前に持ち上げる=興味)で書いてあるので、そのまま耳の差分アセット指示に流用できる。顔(目・眉・白目)は一切使っていない。★核になるのは「嬉しくて耳が跳ねてバレる」(感情の器がそのまま発信機になる=この子固有の失敗)と「上手に隠れすぎて踏まれかける」(得意が裏目)の2つ。

風に置いていかれる耳
草むらで完全に静止しても、風が吹けば周りの草は一斉に同じ向きへ倒れるのに、葉っぱの耳だけは重くてワンテンポ遅れて動く。本人は「風になりきる」つもりで全身に力を入れているが、力を入れるほど耳の遅れが目立つ。ただし風の来る向きは誰より早く分かるので、風上から何かが来るときに最初に気づくのはいつもモッチャル。
画面ではこう見える草が一斉に右へ倒れた半拍あとに、両耳だけがぬるりと右へ倒れ、風が止んだあともゆっくり戻る。見られていると分かると両耳が真上に立ち、そのまま石のように固まる。
どこから導かれるか擬態(葉っぱの耳が本物の葉より重い=風への追従が遅れることから)
90秒の種風の通り道になっている土手で、草の波に一拍だけ遅れる緑のかたまりを、寝転がった男の子が真横から見つけてしまう。
石の上で草のふりをする
危ないと思った瞬間に反射で擬態が始まるので、足元が石畳でも砂利でもおかまいなしに草のふりを始めてしまう。灰色の中に緑がひとつだけ、堂々と据わっている。本人は完璧に成功していると信じきっているので、相手が通り過ぎるまで一切動かない胆力だけは本物。
画面ではこう見えるアスファルトの真ん中でぺたんと平たくなり、両耳を左右いっぱいに広げて地面に伏せる。足音が遠ざかるまで微動だにせず、去ったあとで片耳だけがぴょこんと跳ねて周囲を確認する。
どこから導かれるか擬態(緑の体と葉の耳が「場所を選ばずに」発動することから)
90秒の種夕方の路地、乾いたアスファルトの真ん中に緑のかたまりが一つだけ据わっていて、通りかかった子が三度見してから引き返してくる。
息で膨らむ草
擬態中は完全に止まっているつもりでも、まんまるの体は呼吸のたびにはっきり上下する。草は膨らまないので、静かな場所ほどそこだけ生きているのが分かってしまう。息を止めれば止まるのだが、もつのは数秒で、そのあと大きく吸い直して余計に膨らむ。
画面ではこう見える苔むした石の横で丸くなり、体がゆっくり膨らんではしぼむ。息を止めると両耳が細かく震えだし、限界がきて体がぼふっと大きく膨らみ、両耳が真上に立つ。
どこから導かれるか擬態(まんまる体型が裏目に出る形で=体積が大きいぶん呼吸が見えてしまう)
90秒の種誰もいない神社の石段の隅で、苔の一部だけが規則正しく膨らんだりしぼんだりしている。
止まっているつもりの移動
擬態を解かずに場所を変えたいとき、モッチャルは「動いていないふり」のまま少しずつ滑って移動する。本人の中では静止しているので速度の自覚がなく、はたから見れば草が自分の意思でずるずる歩いている。物音がすると移動の途中でも即座に停止するため、いつも中途半端な位置で止まっている。
画面ではこう見える平たく伏せたまま、短い後ろ足だけで数センチずつ地面を押して進む。耳は地面に広げたまま引きずられ、止まるときは押した勢いで体が半回転してあらぬ方向を向く。
どこから導かれるか擬態(短い手足では「静かに歩いて移動する」ができないことから)
90秒の種校庭の隅、フェンス沿いに並んだ草の列が、休み時間のあいだに一株ぶんだけ横へ移動している。
上手に隠れすぎる
擬態が決まった日ほど誰にも見つけてもらえず、座られたり、跨がれたり、荷物を置かれたりする。擬態のあいだは動かないと決めているので、上に何か乗ってきても最後まで守りきろうとする。それでも本人は怒らず、相手がいなくなってから何事もなかったように膨らみ直す。
画面ではこう見える腰を下ろされる寸前、両耳だけが細かく震えるが体はぴくりとも動かない。相手が立ち去ってから、押しつぶされた形のまま数秒静止し、ゆっくり丸みを取り戻して片耳を持ち上げる。
どこから導かれるか擬態(得意が裏目に出る形で=隠れる性能が高すぎる)
90秒の種バス停の縁石のわきで荷物置きにされた苔色のかたまりが、バスが来るまで一度も動かない。
丸まると、白いお腹が出る
隠れようとして体を丸めるのは正しいのだが、まんまるすぎて丸めた勢いのまま転がり、たいてい仰向けで止まる。緑と斑点で完璧に消したはずが、いちばん目立つ白いお腹が空を向く。短い手足では起き上がれないので隠れるどころか固定されるのだが、見つけてもらうにはこれ以上ない体勢なので、結果的にいちばん早く気づいてもらえる。
画面ではこう見えるきゅっと丸まった瞬間ころんと一回転し、仰向けで四本の短い手足をばたばた振る。振っても戻れないと分かると手足が止まって両耳がぺたんと下がり、数秒後にまた思い出したようにばたばたを再開する。
どこから導かれるかまんまる体型(擬態しようとして丸まった結果、球状ゆえに転がって仰向けで固定される)
90秒の種草むらのなかで白い丸がひとつだけ空を向いていて、通りかかった子がそれが何なのか分からないまましゃがみ込む。
自分の耳を踏んで転ぶ
前に進もうとすると垂れた葉っぱの耳が先に地面へ落ちていて、自分でそれを踏んで頭から前に倒れる。何度やっても毎回はじめてのように驚くので、転んだ回数だけ学習しない。踏まれた耳のほうは無事で、寝るときに折りたたんで枕にできるくらい丈夫。
画面ではこう見える踏み出した足が自分の耳を押さえ、頭だけ前に引っ張られてぼてっと顔から倒れる。倒れたまま両耳が真上に立ち、それから犯人を探すように片耳だけが地面をぱたぱた叩く。
どこから導かれるか葉っぱの耳(垂れているので常に歩行線上に落ちていることから)
90秒の種商店街の裏で水たまりを避けようとした一歩目に、緑のかたまりが自分の耳を踏んで真正面に倒れる。
濡れた耳が目にかぶさる
雨に降られると葉っぱの耳が水を吸って重くなり、前へ垂れてきて視界をふさぐ。本人は前が見えていないことに気づかないまま真剣に歩き続けるので、まっすぐ何かにぶつかる。もっともその重い耳は雨宿りのときの屋根になるので、雨に濡れること自体は平気。
画面ではこう見える濡れた耳が両側から顔の前に垂れ、隙間を作ろうと頭を左右に振りながら進む。電柱にぶつかると一度後ろに転がり、座り直してから耳を持ち上げようと体を大きく後ろへ反らす。
どこから導かれるか葉っぱの耳(薄くて水を吸うと重くなることから)
90秒の種通り雨のあと軒下から出てきた緑のかたまりが、垂れた耳のまま同じ電柱に二回ぶつかる。
頭は入ったのに、耳がつっかえる
狭い隙間に入るとき頭は問題なく通るのに、左右に張り出した葉っぱの耳がつっかえて途中で止まる。手足が短いので後ろに下がることもできず、前にも後ろにも行けないまま真剣に足を動かし続ける。耳をたたんで細くすれば通れるのだが、それを思いつくのはたいてい抜けたあと。
画面ではこう見える石垣の隙間に頭を突っ込んだ姿勢のまま、外に残った体だけが小刻みに前後する。短い後ろ足が地面を掻き、耳が両側でぐしゃりと折れ、やがて動きが止まって耳だけが細かく震える。
どこから導かれるか葉っぱの耳(体の幅より外へ張り出していることから)
90秒の種塀の割れ目に半分だけ入った緑のおしりが、下校時間のあいだずっとぷるぷるしている。
耳で顔を隠して、隠れたつもり
驚いたときは両耳を前へ回して顔を覆う。自分から相手が見えなくなるので隠れたと判断するのだが、まんまるの体は何ひとつ隠れていない。それでも呼吸と耳の震えだけは続くので、怖がっていることは観客にはっきり伝わる。
画面ではこう見える両耳を顔の前で交差させ、その場でしゃがんで丸くなる。足音が近づくたびに耳がぎゅっと閉じ、静かになると合わせ目がほんの少しだけ開き、また慌てて閉じる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(顔を丸ごと覆えるだけの面積があることから)
90秒の種自転車のベルに驚いた緑のかたまりが道の真ん中で顔だけを隠し、自転車のほうが避けて通る。
嬉しくて、耳が跳ねてバレる
擬態は完璧なのに、好きなもの(落ちた木の実、知っている足音)が近づくと両耳が勝手にぱたぱた跳ねてしまう。耳は感情がそのまま出る場所なので、隠れているあいだじゅう本人の気持ちが外へ発信され続ける。隠れるのはいつも失敗するが、その耳のおかげで嬉しいことだけは必ず相手に伝わる。
画面ではこう見える草に紛れて体は完全に静止しているのに、両耳だけが小さくぱたぱた跳ねる。慌てて押さえようと短い前足を上げるが耳まで届かず、諦めた瞬間に耳ごと体全体が弾みだす。
どこから導かれるか葉っぱの耳(感情の器がそのまま体の外に張り出していることから)
90秒の種木の下で草に化けている緑のかたまりの、耳だけが近づいてくる足音に合わせてぱたぱたしている。
めくれた耳に驚く
強い風が吹くと葉っぱの耳がぺろりと裏返り、視界の端に見慣れない白っぽいものが現れる。それが自分の耳の裏だと分からないので、他人事のように驚いて飛び上がる。驚いて振り向くと耳も一緒に回るため、いつまでたっても追いつけない。
画面ではこう見える突風で片耳が裏返り、両耳が真上に立って体が一度跳ねる。裏返ったほうを見ようと首を回すと耳も同じだけ回り、その場で二回まわってから座り込み、耳がぺたんと下がる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(薄くて風でめくれる=自分の視界に自分の体が突然現れることから)
90秒の種橋の上の風の強い場所で、緑のかたまりが自分の耳から逃げるようにその場で二回転する。
遠くばかり聞いている
葉っぱの耳は遠くの音がよく聞こえるので、山の向こうの車や隣町の踏切にまでいちいち反応してしまう。何もない方角へ耳だけを向けて長く固まるので、そのあいだに足元まで来ているものにはまったく気づかない。ただし本当に大きな音が来る前に必ず先に気づけるのは、この耳のおかげ。
画面ではこう見える体は伏せたまま、片耳だけが遠くの一点へ向いて止まる。数秒おいて体が耳を追って向き直った瞬間、目の前にいたカエルに気づいて両耳が真上に立ち、後ろへころんと転がる。
どこから導かれるか葉っぱの耳(集音力が高すぎて注意が遠くへ持っていかれることから)
90秒の種田んぼの畦で、何もない山のほうへ耳を向けたまま固まっている緑のかたまりの足元を、カエルが横切る。
ひっくり返ると起き上がれない
体がほぼ球で手足が短いため、一度仰向けになると支点が作れず自力では戻れない。本人はまったく諦めず四本の手足を全力で振り回すが、振れば振るほど背中を軸にその場で少し回るだけ。それでも丸いので転んで痛い思いをしたことは一度もなく、本人は転ぶこと自体は気にしていない。
画面ではこう見える仰向けで短い手足をばたばた振り、体が背中を軸にゆっくり半回転する。力尽きて手足が止まり両耳がぺたんと下がるが、しばらくするとまた思い出したようにばたばたを再開する。
どこから導かれるかまんまる体型(短い手足では起き上がるための支点が作れないことから)
90秒の種土手の途中で仰向けになった緑のかたまりが、ばたばたしながら向きだけ少しずつ変わっていく。
転がると止まれない
歩くより転がるほうが速いので急ぐときは必ず転がるのだが、丸いので自分では止まれないし曲がれない。行きたい場所を通り過ぎても本人は真面目に移動を続けているつもりで、止まってから改めて向き直る。おかげで坂の下りだけは誰よりも速い。
画面ではこう見える助走なしでころんと横倒しになり、そのまま坂を転がっていく。途中で耳が体に巻きついて速度が落ち、止まった場所で座り直し、片耳だけ跳ねてから元の方向へ体を向け直す。
どこから導かれるかまんまる体型(ほぼ球で、制動と旋回のための手足が足りないことから)
90秒の種石段の一番上でうっかり転がりはじめた緑のかたまりが、下まで行ってから何段か戻ってくる。
細すぎる隠れ場所を選ぶ
隠れられるかどうかを自分の体の大きさではなく「緑があるかどうか」で決めてしまう。草が一本しか生えていない場所でも、その一本の裏へ回り込んで完全に隠れたつもりで静止する。本人は極めて真剣なので、見つかるまで一切動かない。
画面ではこう見える細い草一本の後ろに体を寄せ、耳を縦にたたんで幅を合わせようと体を横に細くしようとする。それでもはみ出しているので少しずつ左右に位置を調整し、最後は諦めて動きを止め、息だけしている。
どこから導かれるか擬態(隠れる判断基準が「緑があること」になっていて、自分の大きさが計算に入らないことから)
90秒の種河原の草が一本だけ立っている場所で、その裏に緑のかたまりが真剣に幅を合わせようとしている。
緑で丸いものに挨拶する
自分の隠れかたを基準にしているので、緑で丸いものは「上手に隠れている仲間」だと判断する。苔玉でも置き忘れられた緑の帽子でも、片耳を跳ねさせて挨拶をし、両耳を前に持ち上げたまま返事を待つ。待っても返事がないと、相手はまだ擬態の途中なのだと解釈して、隣で一緒に静止してあげる。
画面ではこう見える緑の帽子の正面に座り、片耳だけをぴょこんと跳ね上げる。返事がないので両耳を前に持ち上げたまま静止し、しばらくして自分も同じ形に丸くなり、二つ並んで動かなくなる。
どこから導かれるか擬態(自分の隠れかたの理屈を、そのまま相手にも当てはめてしまうことから)
90秒の種公園のベンチの下に落ちている緑の帽子の隣で、同じ形のかたまりが並んで動かなくなっている。
先に固まってから、隠れ場所を探す
危険を感じると考えるより先に体が擬態に入るので、隠れる場所を選ぶ前にその場で静止してしまう。固まったあとで「ここは隠れられない」と気づくのだが、動くと擬態が崩れるため、耳だけを使って行き先を探すことになる。結果、何もない場所で長いこと固まっている。
画面ではこう見える開けた砂地の真ん中でぴたりと平たくなり、体は動かさずに両耳だけが左右へゆっくり向きを変える。よさそうな草むらを見つけると両耳がそちらを向いて前へ持ち上がるが、体はいつまでも動かない。
どこから導かれるか擬態(判断より先に発動する反射であることから)
90秒の種何もない砂の上で平たくなったまま、耳だけがゆっくり左右を見回している。

生き物他の生き物との関係14項目

モッチャルと他の生き物の関係は、すべて「葉っぱの耳・まんまる体型・擬態」が招き寄せた事故か勘違いから始まる。虫には食草や花と間違われ、鳥には卵や石と間違われ、植物には一方的に懐き、遅い者同士とだけ歩調が合う。どの関係も本人の意図ではなく体つきの結果であり、じたばたしても解決せず、そのまま日が暮れる形で完結する。

耳にとまる蝶/気持ちが勝手に書き換わる
耳が本物の葉に見えるので、蝶やガが休憩所として降りてくる。モッチャルの感情は耳の角度だけで出るため、片耳に蝶が乗った瞬間、その耳だけが重みで垂れ、本人の気持ちと違う「しょんぼり」の形になってしまう。訂正する手段がないので、もう片方の耳を限界まで立てて釣り合いを取ろうとする。
画面ではこう見える上機嫌でぴんと立っていた両耳の片方に、白い蝶がふわりと着地。その耳だけがゆっくり傾いて垂れる。モッチャルは首を反対側へ倒し、残った耳を限界まで立てて、体ごと斜めに傾いたまま静止する。蝶が飛び立つと両耳が同時にぱっと戻り、その反動で尻もちをつく。
どこから導かれるか葉っぱの耳(葉と誤認されて虫が乗る=感情表示器官が他の生き物に占領される)
90秒の種日だまりで上機嫌のモッチャル。片耳に蝶が乗り、以後ずっと体を傾け続けるだけの90秒。
耳をかじる青虫/いちばん苦手な相手
耳が葉の形をしているせいで、青虫には食草にしか見えない。かじられても痛くはないが、耳の縁が欠けると輪郭が崩れて草に紛れにくくなる。かわりに、青虫を短い前足で挟んで腹の丸みに乗せ、転がるように本物の葉まで運ぶ作業だけは異様に手慣れている。青虫は毎回戻ってくる。
画面ではこう見える耳の縁でもぞもぞ動く青虫。モッチャルは耳を思い切り下げて青虫を視界に入れ、短い前足で挟んで持ち上げ、腹の丸みに乗せて隣の草まで転がっていく。置いて戻ると、もう別の青虫が反対の耳に乗っている。両耳を後ろへ平たく倒す。
どこから導かれるか葉っぱの耳(食草と誤認され、欠けると擬態の輪郭が崩れる)
90秒の種朝、耳の欠けに気づく。運ぶ→戻る→運ぶを繰り返して日が暮れる。
鳥の影と完全静止/背中に降りられても動かない
短い手足とまんまるの体では走って逃げられない。かわりに、呼吸の動きまで消して固まっていることだけは誰よりも長く続けられる。上空に影が差すと耳をぴたりと畳んで伏せ、ただの苔むした石になる。鳥がその背に降りて羽づくろいを始めても動かない。
画面ではこう見える影が横切った瞬間、両耳が音もなく後ろへ倒れて背中に張りつき、体が地面へ沈むように低くなる。小鳥が背に降り、爪で毛をかき分けて羽づくろい。モッチャルは瞬きひとつしない。鳥が飛び去って十数秒たってから、片耳の先だけがぷるぷる震え出し、やがて全身がぶるっと震える。
どこから導かれるか擬態(逃走できない代償として固まる。得をするのではなく、耐えるだけ)
90秒の種開けた草地を横断中に影が差す。石になったまま鳥に居座られる90秒。
卵と間違える鳥/転がされて運ばれかける
まんまるの体で白い腹を上にして寝ていると、巣を探す鳥には卵にしか見えないらしい。くちばしで転がされ、運ばれかける。重すぎて持ち上がらず、自力では起き上がれないので短い手足を四本とも空に掻く。ただし転がること自体は得意で、坂に入れば鳥より速い。
画面ではこう見える仰向けで腹を出して寝ているところへ小鳥が来て、くちばしで横腹を押す。ころりと半回転。両耳がぴんと跳ね上がる。手足が四本とも空を掻くが体が起きない。押されるたびに転がり、坂に差しかかった途端に勝手に加速して鳥を置き去りにし、草むらでぼふんと止まる。
どこから導かれるかまんまる体型(白い腹+球形=卵に見える。短い手足で起き上がれない)
90秒の種昼寝中に転がされ、坂を転がり落ちて見知らぬ場所で目を覚ますまで。
カタツムリと歩調が合う/唯一の並走相手
短い手足のせいで歩みが極端に遅く、たいていの生き物には置いていかれる。唯一カタツムリだけが同じ速さで進む。追い越しも待ちもいらない相手なので、出会うと自然に横に並び、同じ方向へ何十分でも並走する。並んでいるあいだ、両耳はゆるく水平に落ち着いたまま一度も動かない。
画面ではこう見える濡れた倒木の上、カタツムリの真横にぴたりと並んで進む。ときどき半歩だけ先に出て、立ち止まって待つ。追いつくとまた歩き出す。耳は左右に水平に垂れたまま微動だにしない。分かれ道でカタツムリが枝の方へ曲がると、片耳だけを持ち上げてそちらを見送り、自分はまっすぐ行く。
どこから導かれるかまんまる体型(短い手足=低速。速度が合う相手が極端に少ない)
90秒の種雨上がりの倒木。並んで進み、分かれ道で自然に別れるだけの90秒。
ダンゴムシの真似ができない/もう丸いのに
すでに丸いのに、丸くなる動作だけはできない。短い手足が届かず、体を抱え込めないからだ。ダンゴムシが一瞬で球になるのを見て、同じことを何度も試みる。かわりに、坂を転がって下りるときの姿勢の安定だけは群を抜いている。
画面ではこう見える落ち葉の下でダンゴムシがくるっと丸まる。モッチャルは真正面から覗き込み、両耳を前へ倒して真似を始める。短い前足で腹を抱えようとするが指先が届かず、力むほど後ろへ倒れる。仰向けのまま手足をばたつかせ、起き上がってまた覗き込む。最後は隣で腹ばいのまま、丸まっている「つもり」で静止する。
どこから導かれるかまんまる体型(丸い=すでに完成形なのに、丸まる動作は短い手足で不可能)
90秒の種落ち葉をめくったらダンゴムシ。真似して転ぶを繰り返し、日が傾く。
シダに一方的に懐く/返事のない相手に通う
自分の耳と同じ形の葉を見つけると仲間だと思って寄っていく。並んで座り、風でシダが揺れると同じ角度で耳を揺らして返事をする。当然シダは応えないし、揺れは風まかせなのでタイミングも合わない。それでも毎日、同じ株のところへ通う。
画面ではこう見えるシダの株の根元に、耳を左右に広げてぴたりと並んで座る。風が来てシダの葉が右へ傾くと、少し遅れて両耳も右へ傾く。風が止むと耳だけがゆっくり戻る。何度か合わせるうちに一度だけ完全に同期し、両耳をぴんと立てて数秒固まる。次の風では、また外す。
どこから導かれるか葉っぱの耳(自分の耳と同形の植物を同族と見なす。感情表現の器官で会話しようとする)
90秒の種沢沿いのシダの株。揺れを合わせ続け、日が落ちたら帰るだけ。
背中の苔/擬態が本物になっていく共生
湿った場所で長く動かずにいるうちに、背中の毛の間へ本物の苔が根づく。擬態がだんだん本物になっていく。乾くと苔が縮むことだけは分かっているらしく、雨のあとは水たまりへ背中から沈みに行く。ただし苔が一片でも剥がれると、その場でうろたえて動けなくなる。
画面ではこう見える浅い水たまりへ後ろ向きに入り、背中だけを沈めてしばらく座る。上がってきた背中の苔が濃い緑に戻る。帰り道、枝に引っかかって苔がぺりっと剥がれ落ちると急停止し、両耳が真横へぴんと張る。落ちた苔を前足でつまみ、背中に戻そうとするが手が届かず、地面の苔に背中をこすりつけて代用する。
どこから導かれるか擬態(苔に紛れて動かずにいる時間が長い結果、苔の側が住みついてしまう)
90秒の種雨上がりの沢。背中を濡らしに行き、帰りに苔を落として、こすりつけて終わる。
アリの行列/こそばゆくて固まっていられない
擬態は「動かないこと」だけで成り立っているので、体の上を何かが歩くのがいちばん困る。アリの行列の進路に座ってしまうと、白い腹を何十匹も渡っていき、こそばゆさで固まっていられない。ただし行列が耳へ乗り換え、葉脈の溝を一列で渡り始めたときだけは、息を止めるようにして耐えきる。
画面ではこう見える座ったまま、腹の白い毛の上をアリの列が横断していく。全身がぴくぴく痙攣し、両耳が小刻みに震える。耐えきれず立ち上がると列が乱れ、慌てて座り直す。やがて列が耳の縁へ乗り換え、葉脈の溝を一列で渡り始めると、耳を水平に固定して微動だにしなくなる。渡り終えた瞬間、全身をぶるぶるっと震わせる。
どこから導かれるか擬態(静止が唯一の防御なので、体表を歩かれると成立が崩れる)
90秒の種木陰で休んだ場所がアリの通り道だった。90秒ひたすら我慢する。
雛鳥に懐かれる/親と間違われた側
巣から落ちた雛は、まんまるで動きの遅いものを親と見なすらしく、後をついてくる。餌をやることも巣へ返すこともできない。できるのは、歩く速度がたまたま同じであることと、雨が降ってきたら片耳を傘のように傾けてやることだけ。
画面ではこう見える振り返るたび、灰色の雛が三歩後ろにいる。歩き出すとついてくる。立ち止まると雛も止まる。前足で草の実を掘り出して置いてみるが、雛は見向きもしない。雨粒が落ち始めると、雛の真横に座り、片耳だけを大きく傾けて雛の上へかざす。反対の耳と自分の頭は濡れたまま。
どこから導かれるかまんまる体型(丸くて低速な影=親鳥の代用に見える。速度も雛と一致する)
90秒の種藪から出てきた雛が後をついてくる。夕立が来て、片耳をかざしたまま終わる。
蜘蛛の巣/毎朝いちばんに顔で見つける
背が低く目が地面すれすれにあるので、朝いちばんの蜘蛛の巣は必ず顔で見つけることになる。糸は耳にいちばんよく絡み、払おうにも手足が短くて顔まで届かない。かわりに、頭を高速で振って耳の遠心力で糸を飛ばす動作だけは、やたら洗練されている。
画面ではこう見える藪の間を進み、正面から糸に突っ込む。両耳が糸に引かれて前へ折れ曲がる。前足を顔へ伸ばすが肘から先が届かず空を掻く。諦めて頭を左右へ高速で振り、遠心力で耳を回して糸を飛ばす。飛ばし終えて両耳をぴんと立てると、二歩先にもう一枚の巣がある。両耳が同時にぺたんと後ろへ倒れる。
どこから導かれるかまんまる体型(目線が地面すれすれ/手足が短くて顔に届かない)
90秒の種朝の藪。抜けても抜けても巣がある道を、頭を振りながら進む90秒。
耳の斑点を花と間違える蜂
耳に散った薄クリームの斑点は、遠目に小さな花の房に見えるらしく、蜂やハナアブが真っ直ぐ寄ってくる。蜜はないので着地しては離れるだけだが、羽音が近づくと耳が反射的に畳まれ、畳むと斑点が寄り集まって余計に花らしくなり、また呼んでしまう。逃げ足はないが、羽音の方向を耳だけで正確に追える。
画面ではこう見える羽音。両耳がくるりと音の方向へ向く。ハナアブが片耳の斑点に着地し、口を伸ばして探るが何も出ない。すぐ飛び立ち、また戻る。三度目で耳をぎゅっと内側へ畳むと、丸まった耳に斑点が寄り集まり、今度は二匹に増える。頭を低くし、両耳で顔を挟むように隠して、羽音が消えるまで動かない。
どこから導かれるか葉っぱの耳(葉の面に散った薄クリームの斑点=花の誤認。畳むほど花らしくなる)
90秒の種日向の斜面。羽音に追われて耳を畳むを繰り返し、日陰へ移って終わる。
シカに懐くが気づかれない
草や苔に紛れて見えるので、シカのような大きな獣にはそもそも存在を認識されない。モッチャルの方は一頭のシカに懐いていて、来るたび蹄のすぐ横まで寄っていく。踏まれかけては転がって避ける。気づかれないぶん、あの距離まで寄れるのはモッチャルだけでもある。
画面ではこう見えるシカが草を食む足元。蹄のすぐ横まで歩いて座り、両耳をぴんと立てて見上げる。シカは顔を上げず、位置を変える拍子に前脚が下りてくる。モッチャルは横倒しに転がって避け、二歩離れ、また同じ距離まで戻って座り直す。シカが去ると立ち上がって数歩追い、追いつけずに止まり、両耳がゆっくり水平まで下がる。
どこから導かれるか擬態(存在を認識されない=一方的な片思いが成立してしまう)
90秒の種朝もやの草地。シカの足元へ通い、踏まれかけ、見送るだけの90秒。
トカゲに日向の席を譲る
まんまるの体は冷えやすいらしく、朝は必ず日向の平石の上にいる。同じ石をトカゲも狙う。押しのける力も速さもないので、モッチャルは端へ端へと寄って場所を空けてしまう。ただし丸い体は石の熱をよく溜めるので、最後にはトカゲの方がモッチャルの背中に乗ってくる。
画面ではこう見える平石の真ん中で腹ばいになり、耳を左右に広げて日を受けている。トカゲが石に上がってくると、もぞもぞと端へずれる。ずれた分だけトカゲが進む。石から半分はみ出したところで、トカゲが向きを変えてモッチャルの背中に乗る。モッチャルは動かない。両耳がゆっくり後ろへ倒れて、そのまま平たくなる。
どこから導かれるかまんまる体型(押しのける力も速さもない/丸い体が熱を溜めて座布団化する)
90秒の種朝の岩場。席を譲り続け、最後は背中に乗られたまま日が高くなる。

世界世界のルール12項目

世界のルールは12項目。核は「モッチャルの体色は固定で、変わるのは世界のほう」という反転で、擬態を能力ではなく受け身の性質に留めた(=便利すぎる能力の禁止に抵触しない)。これにより毎回ちがう世界という方針が設定上の必然になる——苔の上では本当に消え、雪やコンクリの上では丸見えのまま本人だけが隠れたつもりで静止する。世界を跨いで固定するのは4点だけ:①画面のどこかに「人の暮らしの縁の、湿った緑」の面が一箇所ある(背景美術の唯一の共通条件)、②登場=背景が動く/退場=風景に戻る(掴みと閉じの文法。末尾フックなしの設計に対応)、③大人は庭石として扱い、気に留めないが追い払いもしない(珍獣でも秘密でもない)、④種名がなく呼び名は毎回その子がつける。天候と季節は世界側の変数として擬態の成否を動かし(風=完成/無風=露見/雨=不便と傘の対/秋=最強・冬=最弱)、いずれも不便に必ず得意を対で置いた。人語は解さず、反応は片耳の跳ねのみに統一している。

名前がない。呼び名は毎回その子がつける
「モッチャル」という種名を知っている人間はいない。子どもはその場の印象で勝手に呼ぶ(「こけ」「みどりの」「まる」)ので、回が変われば呼び名も変わる。★毎回ちがう子ども・ちがう世界という方針と矛盾しないどころか、呼び名が毎回ちがうこと自体が世界のルールになる。
画面ではこう見えるどんな呼び名で呼ばれても、声のした側の耳だけが片方ぴくりと跳ねる。名前を変えて呼び直しても跳ね方はまったく同じで、言葉ではなく音に反応しているだけだと画で分かる。
どこから導かれるか擬態(正体が特定されないので固有の名前が定着しない)+葉っぱの耳(反応は片耳の跳ねだけで返す)
90秒の種子どもが五つの呼び名を順に試し、どれにも同じ片耳の跳ね方しか返ってこないまま、最後のひとつを勝手に決めて帰る90秒。
登場は「探して見つける」ではなく「背景が動く」
モッチャルは画面の外から入ってこない。すでに映っていた苔の塊や石の隣のふくらみが、あるとき動く。★冒頭はクロースショットで情報量を絞るという方針と直結する、この作品の掴みの文法。
画面ではこう見える苔の質感だけの寄りカットが数秒静止したあと、画面中央の緑の塊に黒目がふたつ開く。葉に見えていた2枚がぱたりと動いて、はじめて耳だと分かる。
どこから導かれるか擬態(静止していれば風景、動けば生物。登場の瞬間=擬態が解ける瞬間)
90秒の種雨上がりの石垣を舐めていくカメラが苔のひとかたまりの上で止まり、そこで目が開く90秒。
大人はモッチャルを「庭石」として扱う
見えていないのではなく、当たり前すぎて気に留めていない。珍獣でも秘密でもないので、追い払われることも捕られることもない。★だから低いアイレベルのカメラは、子どもとモッチャルだけが共有している視点になる。
画面ではこう見える画面上端を大人の脚だけが横切り、洗濯かごを持ったままモッチャルをまたいでいく。おばあさんが「またおる」と一言だけ言って通り過ぎ、モッチャルは動かず、去ったあとで耳を持ち上げて見送る。
どこから導かれるかまんまる体型(低くて丸い=置物にしか見えない)+擬態(生活の中に紛れてしまい注意を引かない)
90秒の種縁側の下でじっとしているモッチャルの前を大人が三度またいで通り、四度目に子どもがしゃがみ込んで初めて画面の高さが下がる90秒。
触ってよいが、持ち帰れない(体が拒む)
持ち帰り禁止というルールは誰も口にしない。まんまるで持ち手がないので、抱え上げても腕からずるりと滑り落ちてしまう。★代わりに落としても平気で、転がって自分でついてくるので、かわいそうにはならない。
画面ではこう見える子どもが両手で抱え上げると短い手足が空を掻き、体が半回転して腕から滑り落ちる。地面でぽてんと転がって耳が顔にかぶさり、それを自分でどけてから、また子どもの足元まで転がってくる。
どこから導かれるかまんまる体型(持ち手がなく短い手足で掴まれない=物理的に運べない)
90秒の種子どもがモッチャルを家に連れて帰ろうとして、玄関までの二十メートルで七回落とす90秒。
居場所は「人の暮らしの縁にある、湿った緑」
里山でも団地の植え込みでも神社の石段裏でも成立する。共通するのは、人が一度手を入れて、そのあと放ってある緑(苔・下草・濡れた木の根・落ち葉だまり)だけ。★世界は毎回まったく変えてよく、この「面」が画面に一箇所あるかどうかだけが背景美術の共通ルールになる。
画面ではこう見えるどのカットにも必ず、画面のどこかに苔の乗った濡れた面が入っている。モッチャルはその面から離れず、乾いた場所に出ると数歩で気づいて転がって戻る。
どこから導かれるか擬態(似せられる質感の上にしか居られない。居場所が体の性質に縛られている)
90秒の種団地の非常階段の下、苔の生えたコンクリの三角地帯だけを行き来するモッチャルを、子どもが乾いたアスファルト側から見ている90秒。
色は変わらない。変わるのは世界のほう
緑に薄クリームの斑点は固定で、周囲に合わせて色を変える能力はない。だから隠れる先が変われば擬態の出来も変わり、苔の上では本当に消えるが、コンクリや雪の上では丸見えになる。★本人はどこでも同じ手順で隠れたつもりになって完全に静止するので、隠れられていない回ほど可愛い。
画面ではこう見える石畳の真ん中で息を止めて静止し、耳だけを葉のように左右へ広げる(背景に緑はひとつもない)。子どもが正面から覗き込んでも動かず、相手が諦めて立ち去りかけた瞬間にだけ耳がぷるっと震える。
どこから導かれるか擬態(能力ではなく体色の一致に依存する受け身の性質。世界が変われば失敗する)
90秒の種雪の日、白い庭の真ん中で緑のまま静止しているモッチャルに、子どもが見つけないふりをしてしばらく付き合う90秒。
季節はある。秋がいちばん強く、冬がいちばん弱い
秋は地面が落ち葉で埋まるので、耳がそのまま同化して一年で最も見つからない。冬は緑が自分ひとりになるので、一年で最も見つかる。★同じ体のまま、季節が回ごとの難易度を入れ替える(得意と不便が季節で反転する)。
画面ではこう見える秋=落ち葉だまりに耳を寝かせると輪郭が消え、踏みかけた子どもの足元で耳だけが跳ねる。冬=枯れ野で緑一点のまま丸まり、落ち葉を自分の上に一枚ずつ乗せて隠したつもりになるが、乗せた端から風で飛んでいく。
どこから導かれるか葉っぱの耳+擬態(耳が落ち葉と同じ形をしているせいで、地面の季節によって価値が反転する)
90秒の種冬枯れの畑でモッチャルが自分の上に落ち葉を乗せては飛ばされるのを繰り返し、子どもが黙って一枚ずつ乗せ直してやる90秒。
風が吹いている間だけ、擬態は完成する
風のなかでは耳2枚が周りの枝葉と同じ位相で揺れ、生き物の輪郭が消える。無風のときは耳だけが動くので、居場所がすぐ割れる。★世界側の条件(風の有無)がモッチャルの状態を決めるという、物理のルール。
画面ではこう見える風が渡ると耳2枚が周囲の葉と同じリズムで一斉に揺れ、モッチャルは目を閉じて完全に静止する。風がやんだ瞬間、静まりかえった草のなかで耳だけがぴくぴく動き続けて居場所がバレる。
どこから導かれるか葉っぱの耳+擬態(揺れの同調で消え、単独の揺れで露見する)
90秒の種風が渡るたびに消えて、やむたびに現れるモッチャルを、子どもが風の切れ目だけを狙って探す90秒。
出会いはたいてい雨の日に起きる
濡れると耳が重く垂れ、体の緑が濃く沈んで斑点が浮くので、擬態が効かなくなる。だから人に見つかる日=雨の日、というのがこの世界の決まりごとになる。★代わりに雨の日は耳を傘にでき、雨音の中でも遠くの足音を先に聞き取れる。
画面ではこう見える雨で耳2枚が頭にぺたりと張り付き、背景の苔から色が浮き上がってしまう。軒下で耳を前に倒して自分の頭にかぶせ、雨粒が耳を叩くたびに片耳だけがぴくりと持ち上がって足音の方を向く。
どこから導かれるか葉っぱの耳(濡れると重く垂れる=不便/傘になり集音する=得意。同じ耳の裏表)
90秒の種雨宿りに駆け込んだバス停に先客がいて、それが濡れて隠れそこねたモッチャルだった90秒。
道は空けない。丸まって石になる
短い手足では避けきれないので、人や自転車が来ると横に退かずその場で丸まる。丸まってしまえば踏まれても転がるだけで痛くない。★本人は避けたつもりだが、道の真ん中に石がひとつ増えただけで解決になっていない。
画面ではこう見える足音が近づくと耳を体に巻き込むように畳み、手足を引っ込めて完全な球になる。通り過ぎたあと、耳が片方ずつゆっくり開いて、首だけ後ろを向いて確認する。
どこから導かれるかまんまる体型(避けるより丸まるほうが速い)+擬態(丸まると石に見える)
90秒の種自転車が三度往復する細い坂道でモッチャルが三度同じ位置で球になり、三度目に子どもが自転車を降りて脇へ転がしてやる90秒。
珍しくない。いるところには複数いて、動くのは一体だけ
絶滅危惧でも神様でもなく、苔のある斜面には普通にいくつも転がっている。ただし焦点が当たるのは必ず一体で、ほかは最後まで石のままでいる。★「1話1体に焦点」という制作ルールが、そのまま世界の見え方になっている。
画面ではこう見える引きの画で、石垣の上に同じ大きさの緑の塊が五つ並んでいる。そのうち一つだけ耳がぱたりと動き、残る四つは90秒のあいだ一度も動かない。
どこから導かれるか擬態+まんまる体型(丸い塊が並ぶと石列にしか見えないので、動いた一つだけが生物になる)
90秒の種子どもが五つの塊を順に指でつついていき、四つは本当にただの石で、五つ目だけが跳ねる90秒。
別れは見送らない。風景に戻って終わる
子どもが帰るとき、モッチャルは追わず、鳴かず、見送らない。耳を下ろして静止し、もとの苔の一部に戻るだけ。★末尾にフックを付けないという設計に対応した、全話共通の閉じ方の文法。
画面ではこう見える子どもの足音が遠ざかると、上げていた耳が左右そろってゆっくり下り、黒目が閉じる。カメラが少し引くと、どれがモッチャルだったのか画面上で判別できなくなり、そのまま終わる。
どこから導かれるか擬態(生き物から風景に戻ることが、そのまま終幕の動作になる)
90秒の種帰り道で子どもが一度だけ振り返るが、そこにはもう苔の生えた石があるだけで、それでも子どもは手を振って帰る90秒。

監査矛盾と過剰の洗い出し

★これだけは外せない3つ
  • 【葉っぱの耳が『感情の器』と『擬態の装置』を兼ねている】心が動くと必ず隠れられなくなる。とくに擬態が最後に解けるのはバレたときではなく嬉しくなったとき——感情の出口と隠れる道具が同一器官である以上、こらえようがない。この作品のドラマは全部ここから出てくる。他の設定を全部捨ててもこれだけは残す。
  • 【追うと固まる/止まると通じる=歩み寄るのは子どもの側】近づくほど石のように固まるので、追いかける限り永久に触れられない。誰も教えてくれないので、子どもが失敗の繰り返しから自分でルールを見つける。★これが毎話の文法そのもの。毎回ちがう子どもが出るオムニバスで、40話ぶんの構成を支えられるのはこの反転だけ。
  • 【白いお腹=擬態の唯一の穴であり、自分から仰向けになることが信頼の到達点】草地に白は存在しないので、腹を見せることは擬態を自分から解除する行為に等しい。しかも仰向けは体型上いちばん起き上がれない姿勢で、無防備が長く続く。★『通じた』の最上位の画がこれ1枚で確定するので、到達点を設計し直す必要がなくなる(耳をたたんで足の甲で寝る、はその一段手前の型として併用可)。
観点どうしの矛盾
  • 【最優先|耳の姿勢体系が観点ごとに逆】擬態時の耳が『真上に立てて2枚を寄せる』(擬態の仕組み)と『体に伏せる/地面に伏せて平たく』(生態・天敵/特殊能力・止まると見えなくなる/人との関わり・人は止まっているか動いているか)で正反対。どちらかを正典にしないと擬態カットが1枚も描けない。★9状態表がこの資料に含まれていないため、ここでは裁定不能=9状態表と照合して要決定。
  • 【最優先|ニュートラル位置が2つある】確定設定は『垂れ耳』、擬態の仕組みでも解除の最後は『耳がぱさりと垂れる』。一方で特殊能力(耳が方向を拾う)と人との関わり(慣れの5段階②)は『水平=平常』。垂れと水平が両方ニュートラル扱い。9状態表と照合して要決定。
  • 【最優先|擬態の第一手と『驚き』が同じ角度】擬態=耳を真上に立てる(擬態の仕組み)だが、生態・苦手|強い風では『両耳が一瞬で真上に立つ=驚き』。感情が耳の角度に出るという核ルールと、擬態の姿勢が同じ角度を取り合っている。
  • 【雨の予兆が正反対】生態・苦手|強い風=『雨の来る前に耳がひとりでに持ち上がる』/特殊能力・雨の前に耳が垂れる=『湿気を吸うとしんなり垂れる』。同じ現象に真逆の画がついている。
  • 【朝の露の扱いが正反対】生態・朝=『耳にたまった露が主食。飲み終わるまで頭が上がらない』/普段なにをしているか・朝の水切り=『重いので体ごと震わせて水を飛ばす』。同じ朝の同じ露を、飲むのか捨てるのか。
  • 【濡れた耳が持ち上がるのか垂れるのか】擬態の限界・雨の日=『濡れた耳は重くて立たない。3回試して3回とも落ちる』/特殊能力・耳を屋根にする+普段・雨の日の耳の傘=『頭の上まで持ち上げて重ねる』。立たないはずの耳を傘には掲げている。
  • 【静止できる時間が桁で違う】擬態の仕組み・息が続かない=『もって十数秒』/同・動かないでいられるという特権=『誰にも邪魔されず長く居座れる』/同・成功しすぎる失敗=座られてもじっと/生態・昼=『日中はほとんど動かず』。90秒の時計になる設定なので、十数秒制なのか無制限なのかは詰めが要る。
  • 【固まっている間の目が3通り】擬態の仕組み=『本人は目まで閉じる』/特殊能力・止まると見えなくなる=『目だけが左右に動く』/人との関わり・見つかっても逃げない=『黒目も動かない』。顔の要素が黒目しかない造形なので、この不一致はそのまま画の不一致になる。
  • 【擬態は解除できるのかできないのか】生態・天敵=『自分では解除できないので長いこと止まったまま』/擬態の限界・擬態が解けるのは嬉しいとき=感情で勝手に解ける。解除不能と自動解除が同居している。
  • 【人の読み方が2通り】人との関わり・人は止まっているか動いているか=『人を種類で見分けない。動き以外の判別基準が育っていない』/社会性・人間の『耳』を読み違える=フードの紐や髪の垂れ方で落ち込んでいると判断して寄る。後者は人をかなり細かく読んでいる。
  • 【音への反応の作法が守られていない】特殊能力・耳が方向だけを拾う=『感情表現と混ざらないよう、音を探すときは水平にぐるり回す』と明記。しかし普段・音がしても耳だけ向ける=『両耳が前へ持ち上がる』、人との関わり・覚えるのは音の形=『1音目で両耳がぴんと立つ』で、上下方向に動いてしまっている。
  • 【密集の可否】社会性・等間隔でしか群れない=『かたまると植生として不自然になり擬態が壊れる』/同・縄張りは自分のくぼみ=『隣に無理やり体を押し込み、2体でぎゅうぎゅうに収まる』。
  • 【歩き方が一定しない】普段・転がって移動する=『歩こうとすると自分の垂れ耳を踏んで転ぶ』/特殊能力・転がって移動する=『手足を引っ込め前に倒れ込んで回転』(耳を踏む話がない)/生態・夕=『体を左右に揺すって一歩ずつ登る』。耳を踏むのが常態なら坂も登れないはず。
  • 【幼体の色が確定造形から外れている】社会性・赤ちゃんは隠れられない=『新芽の黄緑(幼体だけの一時的な色)』。確定設定は『緑に薄クリームの斑点』のみで、色のバリエーションは未承認の追加。
  • 【メタ|同じ振る舞いが2〜3回、細部を変えて重複記述されている】転がり移動・耳の傘・朝の露・虫に乗られる・音に耳を向ける・草に化けて静止、が複数観点にまたがって別々の描写で書かれている。それぞれ正典を1つ指定して残りを参照扱いにしないと、絵コンテ段階で毎回ブレる。
★画に出ないので削るべき設定
  • 【生態・春|耳が生え変わり感情が出せない】★削り。この作品の唯一の言語である『耳の角度』が丸ごと死ぬ期間を作ってしまう。春を舞台にした回が原理的に作れない。
  • 【生態・冬|耳を巻いて球になり越冬】★削り。同じく耳が使えず、感情も擬態も出ない上に動かない。90秒の芝居が成立しない。
  • 【特殊能力・耳が日を追う(向日性)】画の中で動くのが耳だけ・体は最後まで動かない、と本人が書いている通り、じたばたが生まれない。湿度で垂れる/乾くと張る、と機能も重複。
  • 【特殊能力・耳が『方向』だけを拾い、何の音かは分からない】方向は画になるが『何の音か分からない』は画で区別できない内面設定。『空振りする』という結果だけ残せば足りる。
  • 【社会性・葉ずれの音は位置だけを伝える】ノンバーバル作品で音に意味を持たせない音、という設計は観客が汲み取れない。しかも他個体がいないと発生しない。
  • 【社会性・目印係/等間隔でしか群れない/けんかは押し合い/親は決まっていない/個体差=葉の縁の形/縄張り=自分のくぼみ】★この群れブロックはまとめて削り(または別枠へ隔離)。完全オムニバス・1体×1人の子どもという90秒の形式に、複数個体を並べて比較する枠がそもそもない。とくに個体差=葉の縁は、1話完結で比較対象が画面に出ないので誰にも気づけない。
  • 【特殊能力・座り込むと重しになる】飛びそうな物を押さえられる=物語を解決してしまう側の便利さ。しかも葉っぱの耳と無関係で、体型ネタとしても『転がる』と食い合う。
  • 【特殊能力・隙間に転がり込む】面白いが耳(一点の特異)に一切かかっていない体型ネタ。体型ネタは『転がって止まれない』『首がないので立てると転ぶ』の2つで足りる。
  • 【普段・鳥に耳を巣材と間違えられて引きずられる】対になる『得意』がなく、かわいそう側に振れる。虫や小鳥に草と間違われて乗られる(我慢して耳が震える)の方が同じ理屈でほっこりに着地する。
  • 【擬態の限界・成功しすぎる失敗のうち『踏まれかける/草として抜かれかける』】危害の予感が出てほっこりから外れる。『座られて、それでも動かず耳だけ震える』に限定すれば同じ笑いが安全に取れる。
  • 【人との関わり・覚えるのは言葉でなく音の形(3音→2音→1音の学習曲線)】毎回ちがう子どもが出るオムニバスでは学習曲線を描く尺がない。連続もの用の設定。
  • 【生態・住む場所は草丈が耳と揃う帯】※削るか要圧縮。『穂先と耳の高さを見比べる』の1カットだけは秀逸なので、生息域の理屈は捨てて仕草だけ残すのが得。
  • 【社会性・会話=耳の角度をコピーし合う/別れの合図=草に戻る】※これは削ってはいけない。前者は子どもとの唯一の相互通信手段(オプション案の『通じた』が依存)、後者はこの企画自身の『満足で閉じる』装置。他個体前提の設定に見えるが、相手を人間に置き換えるとそのまま機能する。
まだ決まっていない点
  • 【サイズ】モッチャルの大きさが一度も決まっていない。手のひらに乗るのか、両手で抱えるのか、子どもが持ち上げられない重さなのか。抱き上げる・膝に乗る・足の甲を枕にする・鉢に頭を突っ込む・傘の下に入る——子どもとの接触カットは全部これで確定するので、最優先で決めるべき。
  • 【触感】1文の核が『もっちゃりした』なのに、触った感じを書いた設定が全観点に1つもない。硬いのか、ぷにぷになのか、苔のように湿っているのか、葉の耳だけ質感が違うのか。撫でる・押される・座られるカットの説得力がここに乗る。
  • 【9状態表がこの資料に含まれていない】耳の角度9状態が実証済みという前提で全観点が新しい角度(水平回転・耳を寄せる・後ろへ流す・折りたたむ・片耳だけ振る等)を追加しているが、既存9状態との対応表がない。新設が9状態のどれに当たるのか、追加なのかを照合する必要がある。
  • 【モチベーションの向き】モッチャルは隠れたいのか、見つけてほしいのか。両方の設定が書かれていて、どちらを基調にするかで40話全部のトーンが変わる。
  • 【90秒の構成テンプレ】冒頭CU→不便の提示→じたばた→通じた瞬間→満足で閉じる、の各パートの秒数配分と、『1話につき設定は1つだけ使う』という運用ルール。40話への設定割り当て表がないと、残した設定も使い切れない。
  • 【子ども側の規約】年齢幅、台詞の有無、大人の登場可否。人語を解さない相手にどれだけ喋らせるか(喋らせるほど『通じていない』が強調される反面、うるさくなる)。
  • 【音設計】ノンバーバルの範囲。鳴き声は無しで確定か、鼻息・葉ずれ・耳がぱたんと鳴る音は出すのか。ナレーションと音楽の有無。
  • 【他個体を画面に出すか】完全オムニバスの原則が『毎回ちがう1体だけ』なのか、群れの中の1体を選ぶのか。ここが決まらないと社会性の設定の生死が決まらない。
  • 【『モッチャル』という名前は誰の呼び名か】子どもは名前を知らないはずで、作中で誰も呼べない名前になっている。呼称の扱い(作品外の総称なのか、子どもが毎回勝手に呼び名をつけるのか)。
  • 【舞台と季節】どの土地のどの季節帯を基本にするか。春と冬を削る場合、40話をどう配分するか。
  • 【画風・技法】2Dか3Dか、実写合成か。まんまる+葉の耳+黒目だけという造形は技法で印象が激変するので、設定確定と同時に決めておきたい。

★今回の個体の立場 — 案

擬態がまだ下手な若い個体(耳を立てるたびに後ろへひっくり返る)
『擬態の第一手=耳を真上に立てる』が『首がないので体ごと反って転ぶ』と物理的に衝突する、という一番おいしい矛盾を1体で全部背負える。じたばたが自動的に生まれ、本人は最後まで真剣。不便(転ぶ)に対する得意(仰向けでも耳だけは立て続ける=諦めの悪さ)が同じカットの中で対になるので、かわいそうにならない。90秒=失敗3回+通じた1回でちょうど埋まる。
冒頭草の穂すれすれの高さから、葉っぱの耳の先だけを大写し。ぐっと力が入って耳が真上へ立ち上がる——と、フレームの下から短い足のつま先がふわりと浮き、画ごと後ろへ倒れていく。次の瞬間、白いお腹が空を向いていて、耳だけがまだぴんと立っている。
★通じた瞬間何度目かの失敗のあと、しゃがんだ子どもが自分の両手を頭の横に上げて、耳のかたちを真似して立てる。モッチャルが動きを止めて、その手をじっと見る。ゆっくり同じ角度に耳を立てる——今度は倒れる寸前で、子どもがそっと背中に指を一本添えて支える。倒れない。支えられたまま、両耳がぱたぱた跳ねて、擬態は完全に台無しになる。子どもは指を離さない。
擬態が上手すぎる年寄りの個体(成功しすぎて、誰にも生き物だと思われない)
『失敗より成功のほうが危ない』というこの生き物の一番おかしい理屈を主役に据えられる。得意(本当に見つからない)がそのまま不便(見つけてもらえない)になっていて、対がひとりでに成立する。じたばたは大きく動けない分すべて耳の微動に集約されるので、耳が唯一の言語であることを一番きれいに証明できる回になる。到達点も『自分から合図を出す』という、この個体にしかできない選択になる。
冒頭草の株のクロースアップ。完全に静止していて、どこにも生き物がいない。数秒。よく見ると、株の一部だけが呼吸でごくわずかに上下している。さらに寄ると、葉と葉のあいだに黒目がふたつ、まばたきもせずこちらを向いている。
★通じた瞬間座り込んだ子どもが背中を預けた先が、モッチャルだった。押されて体がじわじわへこんでも動かない(今動いたら擬態が失敗するから)。耳だけが小刻みに震え続ける。息が限界に来て、ぷはっと体がふくらみ、子どもの背中がわずかに押し返される。振り向いた子どもと目が合う。逃げも隠れもせず、モッチャルは片方の耳だけをゆっくり2回、振る。子どもも片手を2回振り返す。
緑のない場所に迷い込んだ個体(土間・玄関・教室のベランダ)
『地面を選べない=どこでも寸分たがわず同じ姿勢をとる』が、コンクリートの上で最大限に可笑しくなる。隠れられない不便に対して、どんな小さな緑でも見つけるのが異様に速いという得意がちゃんと対になっている。舞台が人間側なので、子どもが手を出せる余地(緑を持ってくる)が生まれ、90秒の解決が子どもの側から来る型を作れる。
冒頭ざらついた土間のコンクリートを、地面すれすれの高さで大写し。画面の端から緑の耳が2枚だけ、ぴんと立ち上がってくる。自信満々の角度で決まっている。隠れる草が1本もないことは、まだ画面に映っていない。
★通じた瞬間何度も鉢植えに頭から突っ込んでは追い出されたあと、子どもが黙って緑色の下敷きを土間に置く。モッチャルが転がって乗り、その上でいつもの姿勢を決める——耳を立て、体を沈め、息を止める。まったく隠れていない。子どもが動きを止めてじっと見ていると、数秒あって、モッチャルの耳から力が抜けて平常位置に落ちる。子どもが風景になった、という合図。
秋、自分だけ色が合わない個体(枯野で緑がひとつだけ浮いている)
『色が変わらない』という擬態の絶対的な上限——変色能力を与えない禁止から逆に導かれた限界——を、そのまま1話の題材にできる。落ち葉を耳に乗せる→歩くと落ちる→拾う→また落とす、というループは『本人は真剣、でも解決になっていない』の見本のような芝居。得意(丸い体で落ち葉の山に一瞬で潜れる)が最後のオチに直結する。
冒頭赤と黄の落ち葉を敷き詰めたアップ。その真ん中に、緑の耳が2枚だけ立っている。落ち葉が1枚ひらりと耳に乗り、耳がわずかに傾いた拍子に、するりと滑り落ちる。
★通じた瞬間何度落としても拾い直すのを見ていた子どもが、しゃがんで落ち葉を1枚ずつ背中に乗せてやる。乗せ終わると、モッチャルは完全に静止する(動くと落ちるから)。数秒もたずに嬉しさで両耳がぱたぱた跳ね、落ち葉が全部落ちる。子どもが笑って、今度は自分ごと落ち葉の山に潜る。並んだ2つのこぶが、それぞれの呼吸でばらばらに上下している。